なちゅん

オールドのなちゅんのレビュー・感想・評価

オールド(2021年製作の映画)
3.9
これは良いスリラー。ゾンビとかで脅かしてくるホラーじゃなく、「普通の人たちの中に異次元の事象が起きている」というタイプのスリラー。
あくまでもベースに人間の生活が置かれている上で突拍子もない事象が起きるという設定は、その人間の強さや弱さをあぶり出してくる。

この映画での「異次元の事象」は30分で1年が過ぎ去ってしまうという時間の早送り。それぞれが目に見えて、肌に感じられて迫ってくる不調や老化に争ったり順応したりしながら、小気味良いテンポで人が死ぬ。言っておきますが、めっちゃ死ぬ。
ひとつ言えるのは、急速な時間の経過よりも統合失調症患者の方がよっぽど怖い。

そんな訳で、いろんな死を目の当たりにしながらだと、ガイのひと言が余計に重く感じられる。どうして出ようと思ったんだろうね。
人が経験するほとんどを経験しないから相対的な経験値は低いのだろうけど、あのビーチで年老いたら、肉体だけではなくて精神的にもある程度成長するのだと思う。先述のガイの一言とか、マドックスの「昨日より色が多いの」とか。

事の真相はちょっと怖いね。背筋にくるタイプの怖さ。
ビーチの設定が有り得ないから映画として観れるけど、時々いる「フィクションと現実を別物として捉えられない人」が見たら、そこら中にのさばってる陰謀論も混同して惑わされちゃうのかも。
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