イチロヲ

狂走情死考のイチロヲのレビュー・感想・評価

狂走情死考(1969年製作の映画)
4.5
過失により警察官の夫を殺害した夫人が、全共闘運動家の義弟に説き伏せられながら、北方へと逃避する。反権力と女性解放を描いている、エロティック・ドラマ。この時代の若松作品にしては珍しいオールカラー作品。

封建的な思想の中で喘いでいる主人公夫人が、「なぜ警察官の夫を衝動的に殺してしまったのか?」「なぜ全共闘運動家の義弟を愛してしまったのか?」という自己分析を展開させる。北国を舞台にした、ロードムービーとしても見応えあり。

主人公の心的解放が主軸かと思いきや、クライマックスには「暴力性の表出」という捻りの効いた畳み掛けが待っている。感情の昂りが扇情的に表現されており、「暴力行為の何たるか」を鑑賞者に叩きつけてくる。

また本作では、真冬の東北と北海道でロケ撮影を敢行しているため、鳴子や小樽といった観光スポットが、当時の姿のままで映像に収められている。演者たちの体当たり演技は言わずもがな。海岸シーンに登場するキチガイ男が最高に笑える。
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