しん

林檎とポラロイドのしんのレビュー・感想・評価

林檎とポラロイド(2020年製作の映画)
4.0
静かながら、記憶の他者性を的確に描き出す秀作でした。記録と記憶の差は、その曖昧さだけでなく手触り感にあるのでしょう。他者とともに紡ぐ記憶という意味が、たんに温かみとしてだけでなく、厳しさやエゴという視点からも描き出しており、しかもポラロイドカメラが「良いもの」とだけ描かれていないところも素敵でした。

本作がポラロイドカメラで進むのも最高でした。「間」があるんですよね。その間が他者との瞬間的な関係を生むんでしょう。歩行者が止まるシーンなど、本当に他者とともに記憶が紡がれる瞬間でした。つまりポラロイドカメラを使うという(写真には映らない)経験こそが記憶なのです。

本作の白眉は後半です。あるシーンで写真を撮ってないのですが、そこから写真の束縛性とそれを手放したときの生の経験感が本当に納得できました。そのあとのバーでのロングカットや葬儀のシーンによって、星を1.5くらい上げたかもしれません。
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