パンデミックで記憶喪失者が続出してる世界なのに、どことなくユルくてユーモアに溢れて、悲壮感はない。
というかこのちょいイカツめの中年男性が子供用自転車で転んだり、飛び込みプールでビビりまくったり、りんごモシャモシャ食ってるだけでも滑稽で、穏やかな笑いをくれる。
荒唐無稽な思い出ミッションにも真面目に取り組んでるのもシュール。
主人公の男が無表情で説明も淡々としていて、音楽もほとんど流れないけど、りんごの取り扱い方で男の感情の機微が分かってしまうんだよな。
食べる食べないで、男が新しく作った記憶と覚えていた記憶を消したいのか残したいのか、そもそもプログラムで新しい記憶を追加していって、元からあった筈の記憶を取り戻すことを止めるたとき、それは本当に「新しい自分」なのか。
何かそんなことを男とりんごを観てて考えてしまった。
ポラロイドやテープレコーダーみたいなアナログガジェットを使うのも、古い記憶は古いままでも生き続けていけるというようなメッセージにも感じた。