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林檎とポラロイドのののネタバレレビュー・内容・結末

林檎とポラロイド(2020年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

プログラムに参加すればきっと、受け入れたくないショックな現実から解放される、新しい人生を歩めると考えた彼が、記憶喪失の人の言動を真似したり、記憶を失った振りをして、現実から逃げる姿は少しシュールだった。
けど、記憶喪失のふりをしようとしても、ロボットのように指示に従う本当に記憶喪失になった人達と違い、感情を持つ彼は、何かに怖がってしまったり、傷付いてしまったり、腹を立てたり、涙を流してしまった。感情は捨てきれなかった。彼の隅っこに残る感情と過去の記憶が垣間見える度に、そのもどかしさに胸が締め付けられた。
彼がずっと忘れようとしていた死とまた直面したことで、過去に起きた妻の死に向き合い、全てを背負って生きていく覚悟を決めたようなラストシーンは、なんだか寂しかったけど、人間の美しさも感じた。
彼が記憶を取り戻したのは林檎のおかげか、それとも何処かで記憶を捨てきれない思いを抱えていたのか。過去を消し去りたいと思う気持ち、全てを無かったことにして1からやり直したい気持ちはよく抱えてしまうので、自分に寄り添ってくれる作品だった。
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