なつこ

初仕事のなつこのレビュー・感想・評価

初仕事(2020年製作の映画)
3.5
亡くなった子供のポートレートを撮影して欲しいという依頼。
それを先輩から振られ…いやむしろ押し付けられたアシスタントの山下。

丸投げの先輩いい加減だなぁ。しかしそれよりも依頼主の安斎が超絶感じ悪い。
家族を亡くしたから、周りに当たり散らして変態呼ばわりしてもいいというのか。何しても許されると思ってるのか。真面目な山下くんが不憫で仕方ない…という印象から始まっただけに、その後の展開が意外であり、良い意味で思いもしなかった方向に進んで興味深かった。

最初は自分の経験のためにと思って引き受けた山下だったが、自分のためではなく、被写体とその家族のために撮らなくてはと、気持ちに変化が生まれていく。
翌日も、もっといい写真を、もっと違う写真を…と、山下は生前のその子を想い描きながら夢中でシャッターを切っていく。

一緒に安西の家にやってきた、山下の相棒(?)の北館が、一緒に作業するのかと思いきや全然撮影には関わって来ないんですよねw
でも、止めたり強く意見したりはせず、一歩引いていてるその感じが良かった。
安斎と山下だけ観てたら息が詰まってしまいそうだけど、彼がいることで、観てる方もなんかホッとする。

このバディ感ではない、山下と北館の絶妙な距離感が良いなぁと思ってたので、演出なのかな?と思い監督にお伺いしたら、逆に「バディ感なかったですか?」って聞かれてしまったw失礼しました😅
でもこういう感じ方の違いを、誰かと話したくなる作品なので、お伺いできて良かったです。ありがとうございました。

作品の折り返し、この仕事にのめり込んでしまっている山下のところに、先輩がやってくる。
そして最初あんなにすごい剣幕だった安斎が、先輩の軽いノリに付き合って、美味しいと酒を飲む。その様子を見て今度は山下がイラつく番。

2人の心理状態が途中から入れ替わっていく感じが絶妙で、この作品の面白さでもあった。

依頼主が依頼必要としなくなったとき、彼初仕事はどんな結末を迎えるのか。

想いを拗らせてしまった山下と、すっかり穏やかになってしまった安斎。
ラストのトイレのシーン、言うとネタバレになるのであれですが、最後が言葉じゃなく…あそこ好きでした。

日本では倫理観だったり、タブー視されやすいデリケートな題材なんですよね。
正直言うと「亡くなった子供を撮る」という行為を、あんまりおかしいと思わなかったんですよね…私倫理観欠落してるのかな😂
人と一緒にすると怒る方もいるかもしれませんが、私は亡くなった愛犬の写真を毎回撮ります。

安斎のセリフにある「永遠」というのとは違うかもしれないけど、埋葬してしまったら、もう二度と目にすることができなくなるその姿を、命を全うした姿をちゃんと残しておきたいと思う。
それは美化なのでしょうか?

観終わってからも色々と考えてしまう、観た人と話がしたくなる、脳裏に残る作品でした。
なつこ

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