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映画大好きポンポさんのdeenityのレビュー・感想・評価

映画大好きポンポさん(2021年製作の映画)
4.3
1300本目の節目の作品は巷で好評と耳にした映画好きなら誰もが楽しめるであろうアニメーション映画の本作にしました。
映画作りをテーマにした作品っていくつかあると思いますが、それをアニメーションとして表現した作品って今までになくて、アニメならではの表現でどう表すのか楽しみにしていました。

ただ、本作は映画作りをアニメにしたという点以上に新鮮に感じる要素がありました。
それは映画作りの中でも、編集に重きを置いている点ですね。

映画を制作するにあたって、当然役者の演技というのは欠かせず、その基となる脚本も大事。あとは音楽とかもわかりやすいですよね。
やはり目につくところってそういう表面的な部分が大きいと思うのですが、実際一本の映画を作るにはもっと多くの人が関わっていて、それこそ直接手を離れたところかもしれませんが、映画を売り出してくれるプロデューサーだったり資金面を融資してくれるスポンサーだったり、エンドクレジットに流れるのってそういう大勢の人の協力でその作品が成り立っているという証なんですよね。
それを踏まえた上でまとめていくのが監督なので、実際の苦悩って見えにくいものではないかと思います。

本作はそういった作品を作っていく上で注目されがちな、あのシーンの撮影の奇跡とか、「こんな苦労があり何度も撮り直してOKを出した」とかじゃなく、そういう集大成として集まった映像をどう編集していくかが肝になっています。

編集という作業は一見地味ですし、尚且つみんなで作り上げたものを切っていく作業なので、ナタリーのように「あのシーン切られちゃうんですね。。」とかも思われたりするわけです。
でもだからと言ってあれもこれもと詰め込み過ぎるとただの冗漫なつまらない映画になってしまうわけで、ポンポさんの言葉通り、「映画は90分で」というのが良作には欠かせず、監督としての葛藤に頭を悩ますわけですね。

そこでジーンくんが導き出したのが、エゴイストになることなんですよね。誰かのために、ではなく、たくさんの人の思いがあるのを理解した上でそれを自分の作品としてまとめ上げること。
この難しさと監督としての覚悟は、地味な編集作業でもかなり見応えあったと思います。

本当に素晴らしかったのは、ジーンご手掛けた「MIESTER」だけでなく、本作自体も90分できっちりまとめた点だと思います。
ただ、そのためには間違いなく編集でうまくまとめる必要があり、本作のように撮影や演技がポンポン転がっていくようなスピーディーで無駄のない展開はある意味では本作のテーマを語る上では仕方なく、多少の円転滑脱具合は目をつむるしかありませんね。アランくんの売り出し方とかも現代っぽさはありますが、やりすぎ感はそりゃありますし。
でも、むしろそれをメタ的に扱ったのが本作なのであり、編集の鮮やかさやアニメならではの表現技術を楽しむべきなのがジーンくんではなく本作の平尾監督の意図であり、それこそ何かを伝えるためには何かを切り捨てる必要があるということを体現しているようにも思いました。

いつもいろんな視野を広げ、様々な感情を教えてくれる映画。それを作り上げてくれる関係者の方々。そういう作品や携わる人への感謝を改めて忘れてはいけないと思わされました。
映画制作関係で気になってた『8 1/2』でもこれを機に見てみたいなと思いました。
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