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私は決して泣かないのクリームのレビュー・感想・評価

私は決して泣かない(2020年製作の映画)
4.1
出稼ぎで働くお父さん達の大変さ、悲しさに胸が締め付けられました。主人公のオラは素行の悪い女子高生で、正直、感情移入出来ないタイプだが、必要に迫られ、少しずつ変わらざるを得なくなります。ほんわか温かい系ではありませんが、疎遠だった親子がハードな背景下で、繋がって行く素敵な物語。好みでした。

ポーランドで暮らす17歳のオラは、ヘビースモーカーで酒好きな不良少女で、車も好きで学校をサボり整備工場でバイトする。家には重い障害を持つ兄がいて仲は良いが、母との喧嘩を聞いていてもかなり気性が荒い。父はアイルランドに出稼ぎに行っていて、長年会っておらず、父がどんな人間なのかも良く知らない。2人を繋げているのは、オラが運転免許を取ったら車を買ってくれると言う約束。ある日、父の訃報が入り、英語が出来ない母に代わり、遺体をポーランドに持ち帰る事になるのでした。




ネタバレ↓




慣れない土地で英語を駆使し、手続きをしなくてはならないのだが、行政の長い列には並ばず、強引に担当者の部屋に入り父を亡くした可哀想な少女アピールをし、彼に手続きを教えて貰う。
病院に行き遺体を確認し、職場で保険金を受け取ろうとするが降りない。大使館で移送許可証を貰い、葬儀屋で運搬用の手続きをする等、大人が聞いても大変そうな作業をこなす。
タイムカードを押さずに働いていた父は労災が認められず保険が降りないと言われた。
途方にくれると思ったら、地元の不良達と酒を飲み交わしたり、相部屋で寝泊まりする等、不良娘は逞しい。
職場で父の秘密を知る。父の死亡状況に納得がいかないオラは、自力で忍び込み、父の事故について調べ、責任者に詰め寄り僅かだがお金を出させた。
そして、父の財布から、サラという女性の写真を見付ける。美容院で働くサラを訪ねると父は彼女と同居していた。サラは父が死んだ為、家賃が払えずに引っ越しする所だった。
オラは、サラの持ち物から、父がオラの車を買う為に貯めていた金を盗んだ。
金は遺体の搬送用には十分だったが、車が欲しいオラは父を火葬し搬送費を浮かして、車を買おうと、優しい行政担当者を再び捕まえ、彼に手続きして欲しいと言うが、
彼はオラに「典型的なポーランド人だな。出稼ぎに来て一生懸命働いてる父の顔も名前も忘れ、毎月お金を送ってくれるだけの人だと思っている。真面目に働いた父の事を考え、父の為に金を使え」と怒った。この人、凄く良い人。
さすがにこの言葉はオラに響いた。
オラは火葬後の残りの金をサラ(恐らく妊婦)にあげ、父の遺骨を引き取り、ポーランドに帰った。
オラは、葬式の会場から霊柩車を盗み、父の遺骨と共に笑顔で走り出す。

17歳の子供にとって、出稼ぎに出て家に帰らない父がどんな存在なのかと描いた何だか胸の痛くなる作品でしたが、何年も帰らなければ、あんな風になって行くのかも知れない。きっと母(妻)も感謝はしていただろうけど、お金を送ってくれる人っぽくなってたのかも⁉。
父を知る人達に話を聞き、お金のない中、何とか家族の為に奮闘するオラは、実はとても優しい子。しかも、不良少女だったからこそ、くぐり抜けた節さえある。ラストに父が愛したであろうサラにお金を渡した時、お父さんも報われたかな?って思いました。
何かオラが嫌いだったけど、最後は好きになってた!素敵な作品だったと思う。

*leylaさん、のんchan、ありがとう♡
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