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アムステルダムのsomaddesignのレビュー・感想・評価

アムステルダム(2022年製作の映画)
5.0
1933年のニューヨーク。復員兵で開業医のバートは親友のハロルドを通じて犬歯解剖の依頼を受ける。それはかつての上官で、父親の死に不信を抱いた娘リズの依頼で解剖を頼まれる。解剖の結果、胃の内容物から毒を盛られた可能性を次第に自分たちが世界に渦巻く巨大な陰謀の中心にいることに気づく。

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予備知識なしで鑑賞。
てっきりサスペンスフルなコメディ映画かと思ってたら、思いのほか深刻な陰謀渦巻く追跡劇……の一方で、益体もない会話とじゃれ合いのラブコメだった。面白かったけど、どういう気持ちになればいいのか分からない。キャッチングに困る変則球な感じ。

とにかくキャストが豪華すぎて笑う。カメオ出演レベルかと思いきや、みんなガッツリ主要キャラだし。
コロナ禍の撮影でなかったとしても、キャストのスケジュール管理や調整とか超大変そう。
そのせいかメインの3人以外はキャストが勢揃いするシーンが少なく、個々に撮影したシーンをツギハギしてて若干萎える。

豪華キャスト陣の中で特にテイラー・スイフトの扱いに笑う。スクリーンに出てきただけでビックリなのに、全く予想しない形で物語から消えてしまった。(つい最近、米ビルボード・チャート“HOT100”のTOP10を独占する歴史的快挙があったのも併せて観るとより味わい深い)

主役の一人バートを演じるのはデヴィッド・O・ラッセル監督とは何度目かのコンビで、互いに求めてることが分かり合ってる感高いクリスチャン・ベール。ヨレヨレっぷりが最高。思えばバットマンの時ですらズタボロになってたから、マッチョ〜ガリガリまであらゆるヨレヨレ姿を演じてる気がする。(『妻と娘が心配するから、もう無茶な体重の増減はしないよ』って言ってたのにまた激痩せしてる!)
片目だけ動かす特殊芸。「マネー・ショート」でもやってたけど、今作だとより印象的に片目だけギョロリと動かす瞬間があってビビる。


もはや「デンゼルの息子」とは呼ばせない人気・実力ともにノリノリとなったジョン・デヴィッド・ワシントン。エキセントリックでハチャメチャな登場人物たちの中で、彼が終始常識人なので安心して見てられる。(バートとヴァレリーだけだと虚実曖昧な物語になっちゃいそう。その症状すら陰謀の一部ではあるのだが)

活躍目覚ましいアニャ・テイラー・ジョイ。マーゴット・ロビー演じるヴァレリーの兄トミー(ラミ・マレック)の妻を好演。美しく知己に長けた女性で、怪しげな弱々しさをのぞかせる一面も。トミーを支え、影響下にある女性ではあるものの、見方を変えれば真に支配してるのは彼女で、トミーを操るファムファタル説ある。


明示はされないものの、分断と独裁主義が忍び寄る剣呑な時代の空気は現代そのもの。一部の権力者や利権者の都合で戦争が起きて、一般市民が駆り出されるのはウクライナ危機を連想させて、図らずもタイムリーな作品になってしまった。

久しぶりに豪華キャストなハリウッド大作をみた満足感はあるものの、豪華すぎるせいか全体的に散漫な印象は否めない。全体的な満足度が各パーツの合計点にならない感じ。予告編やキャスト情報で、事前にハードル上げすぎちゃったのかもしれない。


68本目
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