Masato

マッドマックス:フュリオサのMasatoのレビュー・感想・評価

4.2

聖地 立川シネマシティ a studioにて2回目鑑賞。(2024.06.12)

本シリーズは全体を通して神話的である。それも伝聞された神話であることを作品内で明示しているという解説を読んで納得。故にトムハ版は一概にリブートというわけではなく、かつて伝説の存在として神話となったメルギブ版マックスの存在と重ね合わされて伝聞された物語という解釈。(つまり主人公の名前が救世主みたいだからイエスとされてるのと同じ。)

本作はヒストリーマンが見て聞いた話を基に物語が作られていることをきっちりと明確にしているので、事実とは言えずあくまでも伝聞された神話である。信用のない語り手。そうした見方をすると、神話を見るという形となって新しい視点が生まれた。

FRとはまた違っているものの、これはこれで奥深い。それもあらゆる条件があるなかで仕上げた。ジョージ・ミラー監督の新作に期待。



マッドマックス待望の新作にしてフュリオサの誕生を描いた前日譚。

前作ほどの推進力はないが、「怒りのデスロード」をより豊かにする前日譚であった。前作では描かれなかったバレットファームやガスタウンのビジュアル、前作でのフュリオサの決断に説得をもたせるオリジンストーリーの数々は素晴らしかった。今作からでも問題はないが、前作の拡張的なスピンオフなのでほぼ必須。

まず本作を前作のノリでは見てはいけない。前作のようなアドレナリン全開のアクションは存在するが、ベースは西部劇。人生を蹂躙されたフュリオサが地の底から這い上がり運命を自らの手で掴むドラマだ。終始ビジュアル主導のストーリーテリングであることには変わりないが、あくまでもドラマが主体に見えた。前作みたいなのを期待すると肩透かしを食らうかもしれない。

前作が好きな人にはたまらない一作。フュリオサの物語に留まらず、今作で登場するディメンタス将軍を軸とした大局的な物語を描いており、よりマッドマックスの世界観を掘り下げる内容となっている。小ネタも多くてファンなら盛り上がる点もちらほら。

マッチョな男性たちが自分の権威を強めるために領地を巡って争いを仕掛けていくなか、粛々と自分の人生を取り戻すために這い上がるフュリオサの逞しき本能と輝かしさ。ディメンタスに象徴される野性的で男性的な独占・支配欲と対峙することで、FRに続くイモータン・ジョーに象徴される父親的な家父長制による権威主義が対比して見えてくる。彼女の自由を追い求めるゆえの復讐は決して虚しいものではなく、彼女を彼女たらしめた確固たる意志として希望の光であることを描くラストは、異端の復讐劇で良かった。

全体的に鈍重だったのは個人的に好みではなかったがアクションシークエンスは相変わらず矢継ぎ早にやってくるスリリングを明瞭に描きヒートアップを積み重ねていく最高のアクションだった。

アニャ・テイラー=ジョイはシャーリーズ・セロンに負けない存在感のビジュアル。そして眼力。クリヘムはいつもとはまるで違う声質で邪悪な役を演じていて素晴らしい。
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