土平木艮

ある人質 生還までの398日の土平木艮のネタバレレビュー・内容・結末

ある人質 生還までの398日(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

あらすじ…主人公ダニエルは体操のデンマーク代表選手。しかしケガで選手生命を断たれる→父母、姉妹、恋人たちの前で『写真家を目指す』コトを宣言。プロに弟子入り→ソマリアを訪れて『戦争の中の日常』を撮るコトに生き甲斐をみつける→一人でシリアに向かう→トルコ国境の街でISに誘拐される→何とか脱出。近隣住民に助けを求めるが、ISに連絡されて再び捕まる→予定の便で帰国しないダニエルを心配し、『万が一の時には』のダニエルの指示通りに『交渉人アートゥア』に連絡する→アートゥア、犯人を突き止める。ボスと面会、交渉。身代金は約7000万円→デンマーク政府はテロリストと交渉しない方針で、期待出来ず。家族は独力で身代金を調達するコトに→ダニエル、別の場所へ移送。フランス人ジャーナリスト他の『人質仲間』と知り合う→家族、何とか2500万円ほど準備。交渉する→IS側『侮辱された』として金額アップ、約2億8000万円を要求→ダニエル、更に拷問される。自殺を図るが失敗→家族、募金活動を始める。マスコミに知られない様に、体操協会や国中の企業に協力要請→ダニエル達のもとに新たな人質、アメリカ人ジャーナリストのジェームズが連れて来られる。人質間で連帯感が強まる→(ジェームズは、アートゥアが交渉に当たっているもう一人の"顧客")→解放される人質も出てくる→アートゥア、『ダニエルの居処』『ジェームズも一緒に居る』コトを突き止めるが、アメリカ軍がそこを急襲。救出失敗→見せしめに処刑される人質も出てくる。ダニエル殺害まで残り時間は48時間→母、友人の夫で大企業の経営者を頼る→翌朝、多くの募金が集まっていた。2億円調達成功→ダニエル解放。ジェームズから『家族へのメッセージ』を託される→帰国。日常生活に戻る→アートゥアから連絡。ジェームズの処刑を映像で目の当たりにする→渡米。ジェームズの葬儀に参加。メッセージを伝える。




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実話に基づいた作品。

過度な脚色も無いようだし、善悪の二元論的な語り口も無い。事実に基づいて、出来事が描写されていくだけ。
それなのに、衝撃的な展開・映像が続く。
それだけ『事実が衝撃的』だと言うコト。

監禁・拷問シーンは観てるだけでシンドイ。これが398日、一年以上も続くって、想像するのも難しい。

それでも、ダニエルは助かったからまだ良い方なんだろう。



ISやテロ組織との戦いを『コチラ側』から描いた作品は観たことがあるけれど、『アチラ側』を取り上げた作品は観たことがなかった。

IS側の兵士が、いざ人質を殺害する時に『躊躇い』『恐れを見せる』場面で、『IS側の兵士も、一人ひとりは人間なんだな』と、当たり前のコトを思った。

『人間同士なんだから、分かり合えるはず』『なのに、なんでこんなコトになってしまうのか?』と、考える。
長い歴史、宗教的・民族的な理由が根底にある『複雑な問題』なので、簡単に解決出来るものではない。

観終わって『やるせなさ』を感じた。



『不用意に戦場に乗り込んで、人質にされて、皆に迷惑をかけるってどうなの?』と、ジャーナリスト全般に対して思う部分もある。
でも誰かが伝えないと、皆が事実を知るコトが出来ない。それはとても恐ろしいコトだ、とも思う。


色々なコトを考えさせられた作品。




『いよいよ駄目か?』となりそうな時、それまで気丈に振る舞い、冷静に対処していた姉が泣き出した場面でもらい泣き。


プロの交渉人・アートゥアがカッコよかった。


『100万46クローネ』の募金が『粋』だと思った。
土平木艮

土平木艮