Eike

セブンのEikeのレビュー・感想・評価

セブン(1995年製作の映画)
4.0
1995年に公開された本作「Se7en」はその容赦のない展開とスタイリッシュな映像によりモダンホラージャンルに新しい息吹をもたらした作品。
恐らくアメリカ製のサイコホラージャンルの作品としての頂点は1991年公開の「羊たちの沈黙」と言うことになるのでしょうが、こと「映像スタイル」に関して言えば本作の影響も非常に大きかった気がします。

物語そのものはそれほど記憶に残るものではないと思うのですがモーガン・フリーマン、ブラッド・ピット、グエネス・パルトロウ、そしてもちろんケビン・スペイシーのどシリアスな演技が絡むと嫌でも引き込まれてしまう。
サイコジャンルなら本来非常に重要であるはずの犯人の動機など、かなり強引な印象なのにこれもスペイシー氏のミステリアスな人物造形によって無理やり納得させられてしまいます。
おまけに雨が降りしきる淀んだ街のくすんだトーンが徹底されていて陰鬱さは倍増。
おかげで非アメリカ映画的なあのラストはもはや必然とも思えてしまう。

興味深いのはメチャクチャに陰惨で猟奇的な印象の作品でありながら直接的な暴力シーンは全くと言って良いほど出てこないこと。
死体や犯罪現場の状況は気分が悪くなるくらいに緻密に描かれておりますが、その暴力行為そのもののシーンは見事に出てきません。
それは、最大の衝撃をもたらすクライマックスの経緯に関しても同じで、その重要な一点を一切見せずに押し切った所は技ありと言えましょう。

抑制の効いた演出と徹底したトーンのおかげもあってサイコホラーでありながら非常に「スタイリッシュ」で「おしゃれな映画」を観たような気にもなります。
この方法論は当然類似品を大量に生んだわけですが、その多くが本作のスタイルをなぞっただけでとても成功していると言えないのは明らか。
カイル・クーパーによる超絶クールなオープニングタイトルは現在でも影響力を失っておりませんね。
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