あまんだ

声もなくのあまんだのレビュー・感想・評価

声もなく(2020年製作の映画)
4.6
貧しさから、非合法な仕事をヤクザから請け負う、口のきけない青年と、青年の面倒をみる男性が、子供の誘拐事件に関わってしまい、予期せぬ方向へ転がっていく話。
ヤクザが始末した人間の解体処理と言うエグい仕事をしながらも、埋める時はちゃんと北枕にしてあげて、お祈りまでする、貧しさから犯罪に手を染めつつ、根っからの悪人では無い二人。とは言え、面倒ごとはごめんなので、あっさりとんでもない決断に至ったりもする。
貧しさの前には、正義や倫理と言ったきれい事は通用しない場面を見せながらも、健気に誘拐に耐える少女に、疑似家族のような気持ちを抱いたり、無知ゆえの、また、持たざるものの純粋さのようなものも垣間見える。
対して、拐われて来た少女は、淡々と自分の置かれている状況を理解し、騒ぐでもなく、泣くでもなく、また、時に、自分は女だから、身代金を出し渋られているのかもな…と言う、性差による諦めみたいな、哀しい理解を漏らしたり、子供ながらに頭が良く、行儀や立ち居振る舞いから、一見して、きちんとした家の子であり、また、教育を受けてきた子である事がわかる。そして、最終、その頭の良さが冷酷に感じるような場面があり、青年との対比となっている。
少女の行動はなんら間違っていないが、今まで成り行きを見守ってきた者に、やるせない気持ちを抱かせる効果は抜群。お見事。
あの青年の妹も、、、この先ちゃんと学校に通う事なんて無いんやろな、、、
あの、おっちゃんも気の毒やったな…。でも、悪いことしてるしな…。でも、警察にも行かれへんしな、、、と、どうにもできない彼らのシビアな現状に、本当にやるせない気持ちになる。
うん、今、思い出してもやるせない。
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