ゆみモン

声もなくのゆみモンのネタバレレビュー・内容・結末

声もなく(2020年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

なんともやり切れない話だった。

貧しさゆえに、鶏卵販売をしながら犯罪組織からの闇の仕事(死体処理など)を請け負い生計を立てている、二人の男。口の利けない青年テイン(ユ・アイン)と相棒のチャンボク(ユ・ジェミョン)だ。チャンボクは、テインを幼い頃から親代わりに面倒をみてきたようだ。
ある日、組織の人間に依頼され、身代金目当てで誘拐された11歳の少女チョヒ(ムン・スンア)を1日だけ預かることになる。しかし二人は図らずも誘拐事件に巻き込まれてしまう。そしてテインとチャンボク、チョヒ、テインの妹?による疑似家族のような生活が始まる。
裏稼業に手を染める男たちと、裕福な家庭に育ちながらも家族に冷遇される少女の生活は、心が通い合いそうで探り合っているようで…という微妙な距離感の変化が丁寧に描かれている。
身代金を受け取りに行かされたチャンボクが死亡してからは、テインの困惑と、チョヒへの愛情の深まりが伝わってきた。

「話せない」ということは、こんなに大変なことなのか…と改めて感じた。台詞のないテインを演じたユ・アインが素晴らしい。切なさやもどかしさを良く演じきったと思う。
そして、チョヒを演じた子役ムン・スンアが、子供とは思えない演技力だ。女の子であることで親から冷遇されていると感じている様子、テインをどこまで信じてよいか探っている様子…などの演技に凄みを感じた。

やや消化不良気味のラストが惜しい気がした。あの後テインはどうなったのか…描き過ぎも興ざめだが、もう少し示唆してほしかった。