マシュウ

ドライブ・マイ・カーのマシュウのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
5.0
西島秀俊の感情の起伏が少ないまま物語が進行していくことは自分をひどく安心させた。びっくりするほど美しいカットがいくつもあって広島の風景とともに色鮮やかに移り変わるシーンは記憶に強く残る。手話や多言語の劇を演出する場面では、見るものに対してその1秒1秒を見逃すまいとさせる緊張感や惹きつけるものがあったし、台詞や内容だけでなく本読みが始まればたちまちそこが舞台に変わるように生き生きして見える。

うろ覚えだけど、専属ドライバーのみさきさんの雪の積もった家跡近くで家福に向かって言った「音さんには謎なんて本当はなくって、家福さんを愛したことも他の男と寝たことも全て自然で嘘も偽りがないっていう風には考えられないでしょうか。」というセリフには筆舌に尽くし難い感動を覚えた。コップから水が溢れるような気持ちになる。このみさきさんという人物は話し方や表情が朴訥としているのがどこか魅力的で、母親に対する後悔や失念を抱えながらもそれに向き合うという姿勢が垣間見える。自分の中にこれからも生き続ける存在になると思った。
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