れおん

ドライブ・マイ・カーのれおんのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
3.2
秘密を残して突然亡くなった妻。家福悠介は妻を愛していた。舞台俳優で演出家である彼にとって、妻は何よりも大切な存在だった。喪失感と後悔に苛まれていたある日、妻と関係を持っていた俳優の高槻耕史。そして、仕事で訪れた広島でドライバーの渡利と出会い、止まっていた日々が動き始めることとなる。

日本映画界にとって濱口監督は必要不可欠な存在だと、芸術学の教授がおっしゃっていた。確かに、数々の国際映画祭で受賞歴があり、日本が持つ独特の味を世界に発信する、濱口監督の作品は素晴らしいところがある。まあしかし、いわゆる"フランス映画"のような芸術性を高くし過ぎて、その味を無駄に高貴なものとして奉ることは個人的には好まない。

この映画は、陰湿なところをも美しく描こうと、小説的な美をそのまま映像に投影させている。要するに、アウフヘーベンさせるようにリアリティとフィクションを高次に持ってゆき、観客にその美しさを押し付ける感じの映画。理解できなければしなくて良い。その雰囲気が醸し出されている。

「寝ても覚めても」には、泥臭さがあった。特異な個性でも人間らしさがあり、その信念は変わらない。3時間近くもあるが、短すぎたのかもしれない。描ききれずに端折ったことで、泥臭さが完全に失われている。

カンヌでウケても日本でウケない。賛否も分かれない。(追記:世界的にウケましたね笑)
「寝ても覚めても」のような映画を是非に濱口監督には撮っていただきたい。
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