このレビューはネタバレを含みます
徹頭徹尾まやかしの妻だと知りながらも平常な日々を装う夫(家福悠介)と妻(音)との読み合わせや情事中の言葉が、現実世界とリンクしている。
車内で妻が吹き込んだカセットテープの台詞に合わせて読み合わせをしながら、怒りなどの感情を吐露していく。
そしてどこかで自分の気持ちや状況を俯瞰視していて、人生は演劇の舞台の様。
フィクションとドキュメンタリーの境界をわざと曖昧にした描写が面白い。
「真実はそれがどんなものでもそれほど恐ろしくない。いちばん恐ろしいのは、それを知らないでいること…」
静まりかえる雪原の中に立ったとき、家福は妻から大きな傷を受けたというこれまで自分が目をそむけてきた事実、そして自分が妻に抱いていた感情の真の意味にはじめて直面する。