濱口竜介監督の世界的に評価された代表作。
同監督作品は本作以外だと「PASSION」「親密さ」「悪は存在しない」を見てきた(2024.5.17時点)けど、個人的に同監督作品の面白さは、会話劇に集約されているように思う。
重厚で難解で詩的な会話というよりも、自然と共感し耳を傾けたくなるような、存外分かりやすくて感情的な会話劇が同監督の特徴だと感じている。(演技自体は感情的には聞こえないんだけど、バチバチ感情同士がぶつかり合っている印象が強い。)
その点でいうと本作は、原作が村上春樹であることもあってか、同監督の他作品と比して、会話が重厚かつ詩的で美しい分、いささか分かりづらく、共感が少し難しい作品になっているように思った。(それこそ、小説で読みたいような台詞が多い気がする。)
それでも3時間、いっさいだれることなく引き込まれる凄みのある作品で、西島秀俊などの名優の演技も素晴らしい傑作。
舞台劇における「ワーニャ伯父さん」と家福が重なるような詩的で美しい展開も見事で、静かで素晴らしい運転に通ずるような、洗練さのようなものを感じる作品だった。