しろくま

ドライブ・マイ・カーのしろくまのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
3.8
《広島国際演劇祭では》
家福(西島秀俊)が広島に長期滞在して演出を務め、各国からオーディションで選ばれた俳優がそれぞれの役を自国語で演じながら〝ワーニャ伯父さん〟を上演することになっていたのだが…。

演出を依頼した広島の事務局から、事故のトラブルを避けるため、宿舎と仕事場の車での移動には専属のドライバーをつけさせてほしいという申し出を受けるのだけど、そんなことってある?事故のトラブルを避けたいんだったら、ドライバーをつけなければいけないような遠い所に宿を取らずに、仕事場の近くのホテルを宿舎にした方が、コスパもタイパもいい筈なのに…。

気になって原作を読んだら〝家福は、このあいだ接触事故を起こし免許証も停止になった。お酒が少し入っていたことと、警察の指定した眼科医の検査を受けたら緑内障の兆候が見つかったためだ〟って書かれているんだよなあ。交通事故を起こして免停中だったから、ドライバーを雇おうとしていたのに、原作にない〝広島国際演劇祭〟をぶっこんで書き換えるから変なことになるんだよ。

他にも、家福の妻・音(霧島れいか)が寝物語で話していたヤツメウナギや不法侵入のJKの話って結局何だったの?殺人事件にまで発展したその話が後半回収されるのかと思ったら、見事にほったらかし。ラストの韓国のシーンも説明不足で、なんのこっちゃなんだよなあって思っていたら…。

実は、原作の〝ドライブ・マイ・カー〟はわずか50ページ程度の短編で、腑に落ちないなあって思っていた全て、原作にはない話がつけ足されていて、これって完全な水増し案件だね。映画化に当たって〝ドライブ・マイ・カー〟が収められている短編集『女のいない男たち』の〝シェエラザード〟〝木野〟のエピソードを借用しているのだけど、それがうまく繋がっていないための違和感だったんだね。

ただ、北海道への自分探しの旅という本作のテーマだと思っていたエピソードも付け足しだったのにはびっくり。〝ドライブ・マイ・カー〟なのにロード・ムービーしてなかったんで、遠出させたのはグッジョブだね。

原作はいたってシンプルな〝ドライブ・マイ・カー〟で、表向きは、家福の〝免停になったので、誰か俺の車を運転してくれ〟だけど、実は〝運転手を捜しているの。素敵な時間にして見せるわ。車は持っていないけどね〟っていう裏の意味があって、ビートルズの同名の歌もそんな感じなんだけど…。ということで、複数の男性とあんなことやこんなことをしていた福家の奥さんの音さんも〝ドライブ・マイ・カー〟してたってことね。

視聴メモ:2024.05.23/059/図書館DVD
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