しろくま

岬のマヨイガのしろくまのレビュー・感想・評価

岬のマヨイガ(2021年製作の映画)
3.5
2022.11.03/237/図書館DVD
〝ご飯が美味しいからって油断しちゃだめよ。なんだっけ。美味しいものを食べさせて、太らせた子供を食べるって話。確か悪い魔女が家に誘い込んで大鍋に湯を沸かし…〟

その悪い魔女の話って〝ヘンゼルとグレーテル〟ね。確かに居場所を失った見ず知らずの二人を孫として引き取って、一緒に暮らすっていうお婆さんって怪しすぎる。何か企んでいるんじゃないかって思うのも分かるな。そして、変なことが立て続けに起きて、まるで妖怪大戦争みたいな展開に。

原作では、東日本大震災で地震と津波に襲われるところから物語は始まる。夫の暴力から逃げてきたゆりえさんが、避難所で知らない婆さんに〝うちの嫁です〟と言われたことをきっかけに、一緒に避難している女の子の萌花ちゃんも自分の娘ということにすれば、この子を施設にやらずに済むと考え、そのことを察した婆さんが、萌花ちゃんを自分の孫のように抱きしめ…。これって、災害に乗じた幼児の連れ去り事案になりかねないところを、吉田玲子さんがうまく設定変更してワクワクする話に。

本作は東北地方に伝わる民話を交えながら描かれていて、妖怪たちも愛らしく大活躍。心の傷を抱えた少女が過去を乗り越え大切な居場所を守ろうとするストーリーもそうだが、サンドイッチマンさんや県知事も声優として参加されていて、復興を後押しする素敵な作品に仕上がっている。
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