ドラミネーター

エスター ファースト・キルのドラミネーターのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

いや〜〜おもしろかった。
前作(『エスター』)より本作の方が好き。

まさか殺人鬼同士の戦いに発展するとは、だれが予想した?こんな展開。
ストーリーラインがそもそも面白すぎる。

エスターのスラッシャーシーンがしっかりと見応えがあり、【スラッシャー映画】としてもバッチリ(とは言いつつも、自分自身スラッシャー映画が好きというわけではないので、スラッシャー映画オタクから見てどうなのかはわからない。知りたいところである)。


〈本作の最も良かった点は
        "リーナ"を描いたこと〉

 本作の最も良かった点は"エスター"こと"リーナ"を、前作同様「恐ろしい犯罪者」として、そして、前作以上に「1人の女性」としての面をしっかりと描いたこと。
 エスターの冷酷なサイコ具合を見せつつも、どこか寂しげな、かわいそうな1人の女性リーナにも見える。そしてその傷口に塩をこれでもかと塗りまくる(仮)母と(仮)兄の暴言。
 (仮)母と(仮)兄から「フリーク」と侮辱されるリーナ。人間に忌み嫌われるネズミ。そしてネズミは殺さないリーナ。
 絵を愛するリーナ。
 前作同様「1人の女性」として見られたいエスター。にも関わらず、接近するその方法は欺いて「娘」に扮すること。これでは「フリーク」と罵られても仕方ないと思うが、そんな世の中だからリーナはエスターになったのかもしれない。そして、時を見計らってリーナ(自分自身)を露わにすると、エスターを愛していた"父"はその肩書きを失い、やはりリーナを強く拒絶する。なんて可哀想なんだ。
 エスターの多面性を描くことでキャラクターとしての深みが出てる。


〈ラストについて〉

 本作のラストでは、家の高所に掴まっている(娘と思い込んでいる)エスターを助けるか、妻を助けるか、という状況に夫が追いやられるが、妻はごく普通に落ちて死んだように見えた。
個人的な意見としては、夫がエスターを先に助けて、その結果妻が力尽きて落下したり、エスターが引き上げられてる最中に妻を蹴って落としたりした方が、「娘」という親にとって何よりもかけがえのない存在に位置するエスターがその特権を巧みに利用している悍ましさと、「本妻を見殺しにして嘘つき殺人鬼を助けた」という虚しさ、愚かさが付加できてホラー映画としてより刺激的な演出だと感じる。


イザベル・ファーマン続投してくれたのは嬉しいけど、さすがにこの顔で子ども役はさすがに厳しかったかな…笑
ストーリー上、登場人物みんなエスターのこと子供って認知してるけど、全然子供に見えへん笑

オリジナル(第1作目)より後に創られた【前日譚】としては完璧なんじゃね。
第1作目で描かれた主人公像を改変することなくさらに掘り下げて、1作目の説得力や納得力を引き上げて、更に面白く観れるような前日譚やった。

毒入りのご飯を気づかずにネズミに与えたり(ネズミが死んでいた時のエスターの反応が驚いていたので、おそらく気づいていなかった)、忘れてしまったがその他色々なシーンで「エスター意外とアホやな」と感じたが、そんな時は『怪物(2023,是枝監督)』の湊の台詞が諌めてくれる。
「見てる側だから気づくんだよ」(☜一字一句は合っていないかもしれないが意味合いは同じ)
これはTVのドッキリ番組を見て「こんなの普通引っかかるかな〜」的な発言をした母に対して湊が放った台詞である。
要するに、【映画】として達観している視聴者には分かっても、実際にその場にいるエスターには分かりっこないということである。