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栗の森のものがたりのFlowのレビュー・感想・評価

栗の森のものがたり(2019年製作の映画)
4.0
全編全カットがまるで絵画のような作品で、まさしく大人のための寓話だった。といっても愉快なおとぎ話ではなく、生と死を静謐に見つめた鎮魂歌であり、悠然とした時間が流れる森の記憶を辿る物語である。

舞台はスロヴェニアとイタリアの国境の忘れ去られた土地。そこは金色と銅色の枯葉に彩られた栗の森。

登場するのは年老いた棺桶職人のマリオと、若い栗売りの女性マルタ。それぞれに抱える想いは、去ってしまった者への哀愁と、戻らぬ者への恋慕。
届かない想いを抱いた二人を、豊穣な森が結び付ける。

語られる事も少なく、余白の多い物語だが、不思議なことにそれが心地よく感じる。
詩情豊かな映像美もあり、きっとその間に自然や色彩の移ろい、二人の人生など時間の積み重ねを汲み取れるからだろう。

いつしか時の流れの中で消えゆく土地だとしても、この寓話とともに心に残るものもきっとある。
余韻に浸る時、そこには必ず森の情景が思い浮かぶだろうから。
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