おーもり

映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ) 2021のおーもりのレビュー・感想・評価

3.3
丁寧なリメイク。良くも悪くも、安定したクオリティ。
オリジナル版から、物語構成や流れを見直して序盤はばっさりシーンを削り、後半の追加シーンで伝えたいメッセージを入れている。
宇宙小戦争リメイクが発表されてからずーっと言っているが、個人的には劇場版は完全新作をつくって欲しかった。

情勢的に重なってしまうのは仕方ないが、市街地への軍の侵略とかフィクションに思えない部分もある。
それゆえに、安直に武力には武力を行使し、安直にインフレさせていく軍力、子供達の無邪気な暴力性は気になる。

今回ピリカ星に向かう道中、パピも同行する展開になった。
パピ自身にも家族がいる一人の少年で、嘘をつかないといった彼自身の描写に力を入れ成功している。
しかし、パピとの交流を深める描写のひとつで、ピリカ星に向かう宇宙船内で塞ぎ込むスネ夫を励ます展開がある。それによりスネ夫はこの戦いに向き合い元気を取り戻す。
それは良いのだが、終盤の前線基地襲来時にもやっぱりビビって倉庫に塞ぎ込む。これはオリジナルにもある名シーン。
同じスネ夫の成長展開を2度やる必要あったのか。

オリジナルもそうだったが、敵の1人ドラコルルさんが超有能な智将でめちゃくちゃカッコいい。ドラえもん世界で上司にしたいキャラクターNo.1。
横暴な独裁者ギルモアや、熱し易く喧嘩っ早い副官とは対照的。
冷静で論理的な行動でドラえもん一行を追い詰める。
ドラえもん映画での恐怖描写で、オカルト方面も期待だが、こういう大人の怖さを表現する敵がもっと登場してもいい。

今回のび太の活躍シーンが増えた。石ころ帽子は汗でふやけて脱げるって原作お決まり展開を入れてくれるサービス。
考えてみれば、オリジナル版でのび太なんもしてなかった。気持ちばかりの主人公としての見せ場が用意されたと思ったが、特に射撃や優しさが活かされることもなく、のび太らしい行動での活躍は特にない。

ラスト、おまけとして塾合宿で残念ながら途中離脱した出木杉くんに、完成した自主映画のお披露目を行う。興奮気味に出木杉くんに、自分らの英雄譚を語りまりたくなっちゃう。というオチがつく。
うーん、一番映画制作で活躍していたであろう出木杉くんが不憫でならない。
なんかもうちょっと優しいオチやギャグを組み込ませそうなものだ。
ディズニーやピクサーではその辺りの優しさは抜かりないのだが。

毎年、前年の作品の小ネタが、のび太の部屋にあったりするのだが今回全くなかった。
オリジナルにあった、映画オマージュも期待していたが、オープニングすらなかったのはとっても不満。本当がっかり。
勝手に想像したのは、コロナ禍で公開順が読みきれなかったのか、リメイク作だから他作品と並行制作していて入れ込めなかったのか。
この辺の違和感は制作時の時勢に影響されているような気がした。

やっぱり、リメイクはもうお腹いっぱいな感じがある。オリジナルと比較してどうだ。とかいう感想しか出てこない。
リメイクの方が、完全新作を一から考えるよりも、ベースの話があるからリーズナブルなのかもしれない。

なんでこんなに完全新作をつくってもらうことを推すかというと、話の古臭さもあるが、登場させるひみつ道具も縛られてしまうからだ。
冒頭の映画制作に出したひみつ道具が、全然今の技術で、なんならスマホで出来ることだ。
ドラえもんを今後も続けていき、古くさいキャラクターや未来描写にならないようにアップデートしていくなら、完全新作を作ってもらいたい。