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ザ・ホワイトタイガーのkurageのレビュー・感想・評価

ザ・ホワイトタイガー(2021年製作の映画)
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ブッカー賞受賞アラヴィンド・アディガ作『グローバリズム出づる処の殺人者より』を映画化。本年度アカデミー賞脚色賞ノミネート作品。原作をまだ読んでいないので、どう脚色したのかはわからない。

下位カーストの男、バルラムが勤め先の主人を殺して金を奪って逃げるというシンプルなストーリー。その育ちから、主人に服従することに疑問を持たなかったバルサム。ところが、ある事件を境に主人に対する疑念や自分の信じこまされてきた世界に疑問が生まれ、変わっていく。
ダークヒーロー的な成り上がり話で、インドで下位カーストのものが運命を切り拓くにはこれくらいのことをやらなければホワイトカラーにはなれないということを示唆している(無垢な脳でこの内容を理解してしまうと、ちょっと怖い世界が肯定されてしまう気がするが)。

個人的には、この物語の背景となる2007年〜2010年あたりはよくインドに行っていた。その頃、「バンガロール(インドのシリコンバレー)に行けば下位カーストでもホワイトカラーの仕事ができる」とまことしやかに言われていたのは本当だったのかーという印象。
2007年くらいはデリーでも女性はサリーやパンジャビドレスなど民族衣装を着用していたが、年々、都市部では洋服の着用率が増加し、夜、お酒を飲む女性も増えたような気がしていた。その背景には、留学から戻ってきた良家の子女たちが社会進出したことやグローバル化も影響があるようだった。
Netflixという世界中の人に目が届くメディアで、インドだからこそ起こりうる物語の背景がしっかりと伝わるように紡れている。いろんな神様の世界をモチーフとして名前やシーンに織り込ませているのも興味深い。
電車の中、主人公が大切な荷物を抱えて外を眺めている姿に南インドの風を感じて、インドに行きたくなってしまった......!
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