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ズーム/見えない参加者のnetfilmsのレビュー・感想・評価

ズーム/見えない参加者(2020年製作の映画)
2.9
 最近のニュースは新型コロナ・ウィルスで持ちきりで、心底憂鬱な気持ちになる。私の住む街では緊急事態宣言が出て、県外への外出はおろか、通勤・通学以外は不要・不急の外出は控えるようにと政府からお達しも出ている。どこにも行けず誰にも会えない。何より自分がコロナ・ウィルスにかかることよりも、友人・知人や家族に伝染すことが怖くて結局はどこにも行けない。そんな事がこれから先、いったいどのくらい続くのか?巣ごもり生活もある程度ならば我慢できるが、何月頃までに収束するという当面の見通しがつかないことが事態を更に憂鬱にさせる。日本に限らず、世界中どこでも同じような状況なのだろう。ロックダウンに明け暮れた英国ではウィルスの変異種が猛威を振るうが、映画製作陣もロックダウンされた状況下で、それでも何とか映画を撮る手立てを考えた。ある日のZoom会議、画面越しにそれぞれの表情が見える中、一人が思い付きで話し出す。「Zoomでホラー映画を撮ったら面白いんじゃね?」

 今作はそんな思い付きと軽いフットワークと悪ノリで作られただろうと推測する。新型コロナウイルスでロックダウン中のイギリス。憂鬱な巣ごもり生活に表情も曇りがちな少女の楽しみは、6人の友人グループでZoomを介して週1で定期的に集まることだった。ある時、グループの1人、ヘイリー(ヘイリー・ビショップ)が霊媒師をゲストに招き、みんなで「Zoom交霊会」をしようと提案する。明かりを消して、蝋燭に火をつけ、霊に静かに呼び掛けるとあっという間に霊が出て来る。上映時間68分だから、Uber Eatsが来るよりも早い。霊はドカドカと土足で部屋に入って来たかと思えば、不快な音で怖がらせたり、気配を漂わせたりする。霊はVHSテープにもインターネット回線にもYoutube映像の中にも宿る。ここではZoomというweb会議サービスの中にインスタントに現れては、登場人物たちをやたらめったら怖がらせるのだから。

 問題はZoomの平面的な画面の中に恐怖は宿るのか?それに尽きる。VHSテープやインターネット回線やYoutube映像も多分に平面的であったが、登場人物たちはそれを観たことで、実際の私生活という現実空間の中で悲惨な状況に追いやられていく。つまり平面的な映像は媒介であって本質ではない。然しながら今作ではZoomは媒介だけに飽き足らず、その後の全ての状況すらも映像で説明し、完結させてしまう。役者たちもカメラマンも撮影現場にわざわざ行く必要はない。自宅のパソコンの前で個々人がZoomの中で演技めいたものさえ見せてくれれば、あとはポスト・プロダクションで書き足された残酷映像を編集で処理して映画は一丁上がりだから。コロナ禍を逆手に取ることで映画は安易になり、実体を失う。思い付きのアイデア自体はちっとも悪くないのだけれど、それを実行に移すと途端に陳腐になる。

 やっぱり映画はみんなで撮影現場に来て、監督のよーいアクションの号令の下、一緒に撮影しないと駄目だ。あるいはZoomの映像よりももっと彫りの深い奥行きのあるカメラを使用しないと駄目だ。それがわかっただけでも随分勉強になった。
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