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マスカレード・ナイトのsomaddesignのレビュー・感想・評価

マスカレード・ナイト(2021年製作の映画)
3.5
いるだけで場を撹乱する高岡早紀の凄み

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都内マンションで起きた殺人事件。ある日、捜査本部に匿名FAXが届く。その内容は、犯人が大みそかにホテル・コルテシア東京で開催されるカウントダウンパーティ「マスカレード・ナイト」に現れるというものだった。パーティ当日、潜入捜査のため再びフロントクラークとしてホテルに潜入した警視庁捜査一課の刑事・新田。コンシェルジュに昇進した山岸の協力を得て捜査を進めていくのだが…

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原作未読。今時FAXが物語上の重要なアイテムになるって…。
てっきり原作が古いのかと思ったら2017年の刊行。
旧態依然とした警察組織を象徴してるような、そうでもないような?

友情出演の明石家さんま。前作でのカメオ出演があまりに分かりにくかったせいか、今回は序盤にデデーンと出てきて面白かった。しかも出しなに田中みな実にディスられるし、切なげな表情込みで思わず吹いた。今作イチの面白いポイントだったかも。

期待値をググッと下げて見にいったつもりだったけど、設定や演技や展開がイチイチ引っかかる部分が多くて、やっぱりツッコミながら見ざるを得ない。
やっぱりこのシリーズは劇場よりも、リビングで家族や友達とワイワイ文句言いながら観るべき映画だとおもう。2時間ワイドドラマの豪華版って感じ。

監督は前作から引き続き鈴木雅之監督。フジテレビで長年ドラマを中心に制作として演出補からチーフディレクターまで歴任。数多くの大ヒットドラマを手がけている一方、94年に「劇場版GTO」で映画監督デビューして以降は、「NIN×NIN 忍者ハットリくん」「プリンセストヨトミ」「本能寺ホテル」となんともアレな作品を監督。フジテレビ印映画低迷の力強い原動力な印象。興行的には毎回それなりに成功しちゃうのが悩ましい。

前作以上に高級ホテルの客のわがままっぷりが凄くて、ホテルマンさん達がどんどん可哀想に思えてくる。映画を真に受けてコンシェルジュに無理難題をふっかけるバカが急増しそう。「ホテルマンがお客の要望に全て答えるのが筋だろが💢」て。あー想像しただけで腹立たしい。
大晦日でお客の無理難題だけでもてんてこまいなのに、勝手に居座る警察がいちいち横暴。公権力の暴走の恐ろしさを描いた作品なのだとしら成功してる。令状なしで客室捜索したり、プラバシーの開示をホテルに要求したり……事件は解決しても、その後ホテルの評判ダダ下がりじゃなかろうか。

キムタク・長澤まさみ以外の脇役がどうにも…。
小日向さんはまだしも、梶原善は梶原善を誇張しすぎてるし、渡部篤郎も篠井英介も警察の偉い人ってより、コント的な記号化された刑事を演じてる。新田の引き立て役なのであえて無能に見せてる部分があるにしろ、警察として無能有能以前に、人としてバカに見えてしまう。あの世界の警察組織はマジでどうかしてる。

前作同様、ただでさえレッド・へリング(燻製ニシンの虚偽)が多すぎる作品に加えて、主人公がまんまとあっちこっち振り回されてしまうので有能な刑事に思えない。あからさまなミスディレクションが続いて巧妙な計画に思えない。
あと邦画にありがちな悪いトコで、エピローグがとても長い。一つ一つのエピローグが長い上に、やっと終わったと思ったらまだ続く。電話の切りぎわが合わない人みたいだ。「それじゃどーも」「失礼しまーす」「失礼しまーす」「それでわー」「はいそれでわー」「またー」「またー」「はーい」「はーい」……いつまで続くのか。


なんだかんだ文句がありつつ犯人の正体は予想外だったし、10分に1回くらい山場がきて忙しいので、それなりに楽しかったのは否めない。豪華キャストを贅沢に無駄遣いしてるのもフジテレビっぽい。バブル感っちゅーか、これこそフジテレビ映画を見てる!感。
前作では新田が山岸とのホテルマンの仕事を通じて、人を信じる困難と尊さを学ぶ側面があった。今作だと逆で、山岸が新田の仕事を通じて、誰のための・何のためのホテルのルールかを知る。前作よりバディ感が増した分、二人三脚で頑張るんじゃなく、それぞれ別行動で各々の持ち場を頑張るのが熱い。せっかくのW主演なのに、二人一緒のシーンが減ったのは寂しい気もした。



59本目
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