ねこねこ

ボクたちはみんな大人になれなかったのねこねこのネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

だいぶくたびれた中年男性佐藤。昔の恋人のFacebookを垣間見たことから、2000年代〜1990年代へと記憶が甦っていく。画面は、仕事と恋愛にまみれながら、ついに初々しい青年時の恋愛に辿り着く。はにかみと、緊張と、ときめきと、喜びの時を共有したかおりとの、恋、あっけない別れ。

森山未來はこの振り幅をごく自然に演じた。伊藤沙莉は、地方から上京し、少し大人びた、普通をこばかにする小悪魔的なかわいい女の子そのままだった。

人間の80%はゴミで、20%はクズ。本当は1%良い人がいて欲しい。かつて同じ食品工場にいて、ゲイバーのママになり、今は落ちぶれている七瀬と、佐藤の、ゴミ置き場でのやりとりが切ない。

作品終盤、中年佐藤は、複雑な思いのまま友人七瀬と別れた後、かおりとの思い出の場を辿り、全力疾走する、その走りっぷり。
東京の今と昔をオーバーラップさせながら、けれども目の前にある光景は明らかに違う。夜の闇から、朝日差す、人気ない、少しくたびれた今の東京へ。
バブルからノストラダムス騒動、不景気、TV業界の衰退、東日本大震災、東京オリンピックの残滓など、紆余曲折の時を経た東京の、荒涼とした時空。くたびれている東京。

年を経る中で忘れ去っていたことが、ふと想起された時、その過去がかさぶたで封印されていただけであったことを思い知らされる。

生臭く、薄暗く、単純で、いじらしい、青春の時だからこそ。
みんな大人になったつもりでいて、大人ではなかった、あの時。
今も大人のようでいて、大人ではないかもしれない現在。

自分にも、思い返すのが痛すぎる過去が累々と積み重なっていることを知る。
ねこねこ

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