くりふ

浅草キッドのくりふのレビュー・感想・評価

浅草キッド(2021年製作の映画)
3.5
【もえる師、弟子】

劇団ひとり監督の思い入れが活かされた、Netflixの新作。

ネフリのプロデュースもよかったのでしょうね。画づくりもさすがネフリで、質が高かった。ちょい架空の浅草、て感もありましたが。綺麗すぎて。

浅草フランス座での、深見師匠とたけしの師弟物語、そこから開くツービート誕生物語、このラインでは、すっきりと見応えありました。

まず柳楽優弥くんが、たけしをホントに降臨させてスゴイ!物真似じゃなく、ちゃんとそこに、居る。その役者力に唸りますが、これだけでも見る価値アリ!

でも、現在のたけしが修行時代を振り返る構成ですが、特殊メイクで登場する現在版は蛇足でしょう。逆に、別人に見える。始めてっきり、本人が出て来たのかと思った。出すなら柳楽顔ママにすべきではと。

一方、TV出演を頑なに拒んだ深見千三郎という人は、資料が殆ど残っていないそうで、こちらは似ているのかはわかりませんが、大泉洋のひねた熱演が素晴らしくて、人物に惹き込まれる。

舞台の上から、態度の悪い観客に、この素人が!と怒鳴る熱量。過剰なプライドが熱くも、イタイ。が、自分の芸を見せてもいないのに、他ユーザーをドシロウトと罵倒するどっかのサイトの独りよがりに、ぜひ見習ってほしいものだとは思いました。(←そーゆー輩が居たのです)

しかし、ああまで自分の芸に拘る是非を、物語は問いかけてきます。

芸に人生を賭けることはわかりますが、人生のすべてが芸じゃない。深見さんの選択はどうだったのか? 売れっ子となる弟子との差異で、それがより際立って…そしてあの最後。

史実だそうですが。映画もそうだがエンタメなんて、一炊の夢の中のさらに一欠片、でしかないからね。

人に依るが、もっと大切にすべきは沢山あるから。思い入れたっぷりな男たちのドラマに比べ、取り巻く女たちは、物語としては取り巻きとして終わってしまい、勿体ない。門脇麦のストリッパーなんて、もっと掘るべき物語があると思う。

そんな中でも、深見師匠の支柱だった妻役、鈴木保奈美さんは、存在感が素晴らしくて、しっとりと心に刻まれました。

<2022.3.12記>
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