MasaichiYaguchi

戦火のランナーのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

戦火のランナー(2020年製作の映画)
3.7
難民からオリンピック選手になったグオル・マリアルを取り上げたドキュメンタリーでは、サバイバルする為に走っていた彼が、艱難辛苦の末にアメリカに移住し、ランナーとして成功することにより、走ることで内戦で揺れる祖国・南スーダンへエールを送る姿を描いていて胸熱になる。
私が鑑賞した上映回の後にJICAの方のトークショーがあって、その中で南スーダンについて「凄まじい国」と話されていたが、その「凄まじい国」で筆舌に尽くしがたい経験を幼い子供時代に被ったグオル選手は如何ばかりかと思う。
南スーダンの独立までの歩み、そして独立後に起きた内戦の背景を映画は分かり易く紹介していたが、石油という巨万の富をもたらすものが、ただでさえ多民族国家であるゆえに簡単に分断、対立を生む構造に何とも言えない遣り切れなさを覚える。
グオルは南スーダンの人々に分かり易い形でエール方法として、オリンピックに出場して勇姿を見せることだと考え、それに向けてひたすら練習していく。
最後に彼の目標が今回の東京オリンピック出場だという案内があったが、本人は故障の為、その願いは叶わかったようだ。
開催まで50日を切ったというのに、未だに強行か中止かで揺れている今回のオリンピック、本作を観るとオリンピックとは何の為に、誰の為に開催されるのか、オリンピック憲章を含め、その意義を見詰め直したくなります。