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マ・レイニーのブラックボトムの景のネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

ブルース歌手マ・レイニーとトランペット奏者レヴィーを中心に、白人に搾取される黒人アーティストの悲哀を描くドラマ。ほぼずっと録音スタジオ内で話が進行するので室内劇かつ会話劇にもなっており、舞台を観賞している気分になった。正直、中盤まではストーリーを引っ張る力が弱いように感じてあまり乗れなかったんだけど、ヴィオラ・デイヴィスやチャドウィック・ボーズマンの渾身の演技もあって見終わった今では満足した。チャドウィック・ボーズマンの一周忌に見たけど、改めて惜しい人を亡くしたのだなと……。

開かないドアや新しく買った靴など、小道具の使い方も印象的で面白いんですよね。そうしてレヴィーの拘るものがことごとく意地悪な答えを提示してきて、その末の無情なエンディングには絶句した。白人との地獄のような付き合い方を父親から学び、白人に迎合しながらそれでも夢を叶えようと必死に生きてきた男の楽曲が買い叩かれ、それを白人バンドが歌い上げるところで終わるのがひっでえなもう。レヴィーは罪を犯した後も、才能を開花させる機会を与えられないまま都合良く搾取されていくだけになってしまったのが哀しい。

そしてレヴィーのようにはなるまいと、必死に食らいつくマ・レイニーの生き方も対照的で面白かった。あれほど才能があっても、傍若無人に振る舞わないと使い捨てられるということをマ・レイニーは理解している。彼女は成功者と言えるだろうしレヴィーもそうなろうとしていたけど、実際は後戻りできないしひとたび転落すれば真っ逆様だろうから、こちらも地獄のような世界なのだろうな。
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