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Mandabi(原題)のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

Mandabi(原題)(1968年製作の映画)
3.5
【文学から映画に乗り出したセンベーヌ・ウスマンからの強い想い】
最近、クライテリオンからセンベーヌ・ウスマンの『MANDABI』がカッコいいヴィジュアルでブルーレイ化された。アフリカ映画、特にセンベーヌ・ウスマン作品は私の関心を惹きつけているのでWHY NOT?有無言わさず購入しました。本業が繁忙期だったこともあり、数ヶ月放置していたのですがようやく観ることができました。本作は『チェド』や『XALA』以上に、センベーヌ・ウスマン論を語る上で重要な一本であることが分かったので感想を書いていこうと思う。

センベーヌ・ウスマンは元々、小説家としてのキャリアを積もうとしていた。しかし、当時文盲が多かったセネガルにおいて、社会問題を大衆に提起することの限界を感じていた彼は、フランスに留学していたセネガル人が映画に可能性を抱いていたことに触れ、視覚メディアである映画を通じてセネガル社会の問題に斬りこもうとしていた。

そんな彼の歴史を知ると、本作が作られたのは必然だと言えよう。

咳き込みながら、飯に食らいつき、世話されている無職の男Ibrahim Dieng(Makhouredia Gueye)はフランスにいる親戚から、為替を受け取る。文盲である彼は、手紙読み上げ屋から為替の内容を知る。しかし、彼は身分の登録が十分にされておらず、役所での手続きが必要となる。助けが必要な彼に次々とハイエナがたかってくる。優しくするそぶりを見せながらチマチマと搾取してくる。現金化さえすれば、大金が入ってくるので「金を貸してくれ」と言う人に次々と借金をしながらお金を貸していき、結局騙された上に首が借金で回らなくなってしまうのだ。

文盲故に、お役所的たらい回しと搾取に苦しめられる市民をどこか長閑なメロディで彩る。この絶妙な対位法が、本作にユーモアをもたらしインテリの説教臭さを抜いていると言える。

そして、パリの描写が特徴的な作品でもある。洒落た格好をしながらも、パリのウォールフラワーとして、街の掃除屋として働き街に溶け込む彼。決して成功している訳ではないが、彼の稼ぐお金はセネガルだとそこそこ大金だと分かる。移民労働の実態がよく分かるシークエンスと言える。そして、搾取が日本円にして数千円~数万円単位とチマチマとしているところがいやらしい。いつの間にか、金がなくなっている。中抜きの構図に近いものを感じた。

クライテリオンから出ているブルーレイは画質もとても綺麗でパッケージもカッコいいので、アフリカ映画入門として購入してみてはいかがでしょうか?
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