あさ

TOVE/トーベのあさのレビュー・感想・評価

TOVE/トーベ(2020年製作の映画)
3.6
高校生の頃、比較的ガラ空きの図書室で黙々と受験勉強をしていて「活字なら息抜きでも教養になるっしょ」と頭の悪いことを思いついた私は細々とムーミンを読んでいた。気づいたらアニメを見始めてしまって、ズブズブとスナフキンの沼に溺れたのです。典型的だ。

ただムーミンを選んだのは、一般的に流通しているムーミングッズの「可愛い」というイメージと反してトーベの描いた原作のムーミンが恐ろしくも見えたからだったと思う。スマホで検索して、この人が第二次世界大戦の時代に生きて、反ナチの風刺画を描いていたことを知り、ムーミントロールの背景にある暗い部分に興味を持った。よくよく考えると結構自分の原点感もある。

映画の内容と全然関係のないことに想いを馳せてしまったけれど、それなりにトーベ本人に興味があって見た者のレビューとしても、この作品はイマイチインパクトに欠けるかもしれない。ただし、敢えてこう作られたとも思うし、先にも思いを馳せたように私はトーベの暗い部分を見たかった。ポップでカラフルなポスターは、ムーミンを可愛く消費してきた日本の観客にぴったりだし、自分もかなりビジュアルに惹かれた。けれど、本国ポスターって結構モノクロ寄り。作品自体は淡々としていて、ある意味、商業的な色をふんだんに使わない北欧映画をしっかり見れる。その分説明はしてくれないので、バイオグラフィーだけど彼女を知るには予習が必要なところが若干惜しい。

「人生は冒険、寄り道しなきゃ」という言葉通り、冒険のように人間関係を構築していくトーベ。エド・シーランと2%のコリン・ファースを混ぜた感じのアトスがスナフキンのモデルなのか…。とか、その他にもかなり色濃くキャラクターたちのモデルになっている登場人物たちは見ていて楽しい。若干のポリアモリー関係が終止符を打たれてしまう瞬間の切なさだけは目を覚ました。総じて締まりのない映像感は否めなかったけれど、これはこれで…。う~んしかし期待値までは。ヤンソンの自由な魂は伝わる気がするんだけどなあ。
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