しん

TOVE/トーベのしんのレビュー・感想・評価

TOVE/トーベ(2020年製作の映画)
3.3
ムーミンという作品のもつ軽い暗さがよくわかる映画でした。トーベ・ヤンソンという天才漫画家の闇は深く、それがゆえに作品に陰の成分が宿ったのでしょう。

まず彼女はある種のワガママ(不倫など)を貫いてでも「自由」に生きたかった人として描かれています。しかしその目標はほぼ叶えられません。ムーミンも彼女がやりたかった仕事ではありませんし、付き合った人は本当に好きな人ではなかった可能性があります。つまりこの映画は、悲しみと現実をトーベが咀嚼していく作品とみることができます。

この暗さが第二次世界大戦中から後のフィンランドの暗さと相まって、美しく描写されています。北欧の国の天候や戦時中のもの暗さがトーベの気持ちとうまくマッチしています。映画として物凄くよかったという作品ではありませんが、背景描写や心情描写など、的確かつ丁寧な作品でした。
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