松田

迷子になった拳の松田のレビュー・感想・評価

迷子になった拳(2020年製作の映画)
4.0
いきなり関係のない話だが、自分は仕事には就いてるが、就活中でまさに人生の迷子。
この日、面接を入れていて時間が早めに終わったので駆け込んだ。前から興味はあったものの藁にもすがる気持ちがあった…何か迷子になっている俺を導いてくれるんじゃないか…なんならこれで道が見つかれば…という邪な願いを胸に密かに抱きながら。
結果は、そんな卑屈な願望を打ち砕くほどに痛烈で生々しい力に溢れた映画だった。

あるプロレスラーが出ていた事がきっかけで少し知っていたラウェイ(出てた事を知らなかったプロレスラーも出てて驚いた)。地球上で最も危険な格闘技という謳い文句ぐらいは知ってた。
ラウェイに挑むある日本人選手とラウェイ自体に焦点を置いて話が進む。
ルールが過激…というよりもほとんど禁じ手が無いという無秩序にも思える説明で始まり驚愕して息を呑んでいると更なる衝撃が。
そこにはどんな映画のバイオレンス描写よりもゴア描写よりも目を背けたくなるような、殴る、蹴るといった比喩なしの丸裸の打撃という現実が飛び交っていた。
数秒で心がKOされそうだった。

しかし目を逸らさずに観れたのはラウェイという競技の深さ、その戦いに挑んだ人とそれを取り巻く人々、そして監督それぞれがどこかで何かと戦っていると思えて、さらには自分どころか今を生きる誰かも同じようにどこかで何かと戦っているのではないかと思ったから。
出てくる人達が輝く瞬間を写したシーンは眩しかったが、その分くっきりと影も見える場面も少なくなかった。
そのコントラストの中にきっと誰もが持っているジレンマや人それぞれの戦いを見た。
場所や相手なんて関係ないし誰かと比べる必要もない。誰もが必死にもがいて生きようとすればそこにはその人の人生という戦いがある。そんな事を感じた。
行くべき道なんか見つからなかったけど自分は自分の人生を戦おうという素晴らしい力を貰えるドキュメンタリーだった。
松田

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