ベンジャミンサムナー

BLUE/ブルーのベンジャミンサムナーのレビュー・感想・評価

BLUE/ブルー(2021年製作の映画)
4.0
 吉田監督は『ばしゃ馬さんとビッグマウス』でも夢破れる主人公の話を描いていたけど、本作は終始登場人物に向けられる視線が温かい。

 自分自身ボクシングとは無縁なので、ボクシングのディティール描写について言及できないけど、30年以上ボクシングをやってきた吉田監督自身が殺陣指導してるだけあってリアルな雰囲気は伝わってくる。

 主人公がリングで闘う姿を見てヒロインが涙を流すシーンはボクシング映画でありがちだけど、連敗続きでもヘラヘラしてる主人公瓜田(松山ケンイチ)が試合してる小川(東出昌大)に声援を送る後ろ姿を見てヒロイン千佳(木村文乃)が涙を流す構図は新しい。

 東出昌大演じる小川は、劇中では一番"成功"に近いけど、まるでよちよち歩きをしている赤ちゃんを見てるような危うさがある。
 特に、チャンピオンに勝った直後にロープに登ろうとして落ちそうになる場面と、その後の呂律の回ってないインタビューの場面。

 柄本時生演じる楢崎は自分がボクサーになった事をさり気なく自慢するために、わざわざ同僚の足元に店の商品を散乱させて、ライセンスを目に付くようにスッと地面に置く卑近さがなんとも愛おしい。

 主題歌「きーぷ、うぉーきんぐ!!」で竹原ピストルが本作の内容を端的に表している。

 足跡残したいわけじゃない。
  でも足音鳴らしていたいんだ。