おーもり

Mr.ノーバディのおーもりのレビュー・感想・評価

Mr.ノーバディ(2021年製作の映画)
3.0
うーん。微妙。
予告通りの筋書きに、予想通りの展開に、ドンパチドッカーンを求める観客の期待を裏切らないんだけど、有害な脳筋暴力老人の肯定になっているところが気に入らない。
バイオレンスな描写や、不謹慎殺人を紛糾したいつもりは微塵もない。そういう映画は大好き。
肝心なのは主人公がそれを行動に移す動機の部分なんだよ。

気まぐれに憧れた、普通の家庭。でも自分の中にある暴力性を抑えたいのか、開放したいのかどっちつかず。
「娘が楽しみにしている猫ちゃんブレスレットのため」「バスで絡まれている少女を助けるため」という都合のいい理由を得て、意気揚々と人を殴るのを楽しむ戦闘狂タイプに感じた。
結局、これは中年男性の思い浮かべる”カッコいい俺”の象徴を描きたいだけじゃないのか。
この手の人間は、個人的に今の世の中で一番有害だと思っているから全然乗れなかった。

似た設定のジョン・ウィックは全然同情の余地があるから好き。
裏社会とのしがらみ。抜け出せない煉獄の中で足掻く様がカッコいいし悲哀があって良い。
でも今作のMr.ノーバディさんは、家族のため。という詭弁のもとに、自分の快楽のために暴力を楽しんでいるように見える。親父や、兄弟もそう。
中年男性が考える”カッコいい俺”がやりたいなら、もっと肯定的な理由をもとにした、力の行使を描いてほしかった。

でもまぁクリストファー・ロイドの出演シーンは全部最高だったよ。
クリストファー・ロイド×ショットガンが痛快だという発見は非常によかった。