かたゆき

Mr.ノーバディのかたゆきのレビュー・感想・評価

Mr.ノーバディ(2021年製作の映画)
2.5
彼の名は、Mr.ノーバディ(誰でもない男)。
毎日同じ時間に起きて同じ時間にゴミを出し、同じ時間にバスに乗って会社に行き、そして仕事を終えると同じ時間に帰宅してご飯を食べ、同じ時間にベッドに入る。
そんな単調で平凡な毎日を過ごす、何処にでもいるような普通の男だ。
妻との関係もマンネリ気味で長いこと夜の営みもなく、高校生の一人息子からも疎んじられている。
そんな鬱屈した毎日を過ごしていたある日、彼の家に強盗が入る。
ゴルフクラブで犯人を倒す機会があったのに、彼は反撃を恐れその場で立ち尽くすのみだった。
さすがに息子からも失望のまなざしを向けられる彼。
だが、そのことが彼の中に眠っていた過去を目覚めさせるのだった――。
そう、彼はアメリカ諜報機関の元凄腕工作員だったのだ!!
すぐに強盗の住処を割り出した彼はすぐさま反撃に向かう。
そればかりか、彼は偶然バスに乗り合わせたロシアンマフィアのボスの息子を半殺しの目に遭わせるのだった。
当然、そのことを知ったマフィアのボスが黙っていない。
ぶちギレした平凡な親父と凶悪なマフィア。血で血を洗う抗争の火蓋が今、切って落とされる……。
ごく普通の平凡な中年男のそんな怒りの暴走を終始ハイテンションで描いたエンタメ・アクション。

と、もう潔いくらいベッタベタな内容なのですが、その分安定して観てられますね。
家族から舐められまくりのお父さんも実はキレたら怖いんだぞ!という世の中年オヤジの皆様の願望をものの見事に叶えてくれる内容でございました。
本作のちょっと新しい点は、そんな覚醒したぶちギレ親父が完全無双ってわけではなく、マフィアからけっこう反撃を喰らうところ。
バスの中のアクションシーンなんかだいぶボコボコにされた後に、ぎりぎりで勝利するとか今までにない感じでした。
クライマックスの畳み掛けるようなアクションシーンもけっこうキレがあって大変グッド。

ただ、それに対して脚本がイマイチ。
ちょっとこの主人公が行き当たりばったり過ぎて僕はそこまで嵌まれませんでした。
肝心のロシアンマフィアとのいざこざに巻き込まれるきっかけが、偶然乗り合わせたボスの息子とトラブったからというのは弱い。
やぱ過去の因縁やら現役時代のアレコレが絡んできた方が絶対盛り上がると思うんですけどね。
ここらへん、もっと頑張ってほしかったです。

あと、冒頭の取り調べシーンで出てきた猫も何処で登場するんだろうと思ったら、まさかの一番最後にちょこっと出てくるだけって、「ここまで引っ張っといてそれかよ!」と思わずずっこけそうになっちゃいました。
うーん、アクションシーンとかは普通に良かっただけに、ストーリーの方でももっとカタルシスが欲しかったです。
惜しい!
かたゆき

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