somaddesign

映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園のsomaddesignのレビュー・感想・評価

5.0
年を重ねる毎に舞台が年末のガキ使っぽくなってきてる

:::::::::::

GW映画の風物詩。二年連続で公開延期になるとは思わなかったよ。
何はともあれ今年も劇場で見られて良かったε-(´∀`*)
劇場版クレヨンしんちゃんは、劇場でちびっ子に混じって見るのがいい。
予告編の段階でもう飽きて「かえろーよー」て騒ぐ子がいたり、劇中のしんちゃんに同調しすぎてジタバタ走り出しちゃう子がいたり……映画に対してビビットな反応が面白い。今作だと序〜中盤のホラーな描写にドン引きしてる子が多く、「こわい〜」「いやだ〜」ってお母さんにしがみついてた。トラウマ映画誕生の瞬間に立ち会った気分。

予告で「初の本格ミステリー!」て言ってたから、謎解きを期待して行ったらミステリー部分は意外とちょっと。見ようによっては過去イチハードな劇場版かもしれない。なにしろ「必ずくる別れ」が大前提で、しんちゃん達もいずれ経験し過ぎていく『青春』がテーマ。いつまでもひと所には留まれないからこそ、カスカベ防衛隊が一緒にいられる今を大事にしてく話に見えた。あまりに切ない予感が続くので、これでもう最終回かと思ったよ。
人によっては『「オトナ帝国の逆襲」「戦国大合戦」に並ぶ劇場版の傑作!』て評価するのも分かる。

監督は劇場版クレしんを何度も手がける高橋渉監督。「ロボとーちゃん」「ユメミワールド」と傑作多し。脚本も劇場版を何度も手がけているうえのきみこ。高橋監督とは「カンフーボーイズ」以来の再タッグ。またしてもカスカベ防衛隊が中心の映画になった。親世代が見ると、子供なりの葛藤や成長を見守る構図になるのが特徴。かつて自分が経験したことも想起させるし、子供が親の手を離れて自分の人生を獲得しようとする喜びと寂しさが同居する作り。泣くっしょ、そりゃあ。

舞台はディストピアSF。NetflixのSFスリラーシリーズ「ブラックミラー」の「ランク社会(S3.ep1)」みたいな監視・階層社会。超エリート学園のハズなのに、落ちこぼれクラスの荒れっぷりがすげえ。入学は難しいが、どんな問題児でも追放(退学)しないので、意外に面倒見のいい教育方針かもしれない。
自分のランクが可視化されるって、学生時代ならでは。あやふやな評価を数値化されるって恐ろしさの反面、評価基準が明確かつ厳格なのは案外良さそう。

カスカベ防衛隊が中心なので、野原一家が全く活躍しない。調べたら「オラの花嫁」以来らしい。親世代の活躍が描かれない分、世代を問わなず普遍的な『青春』ついての映画だった。自分の人生を振り返ると、後ろに続いてるタイムラインのごく一部を指差して「あの辺が多分そう…」って感じ。なんかもっと熱中したり夢中になる青春時代があれば良さそうだけど、平々凡々退屈に生きてたのでなんとも起伏に乏しい。何事も半身でやり過ごしてきたせいだな。

風間くんは独善的でなんでも勝手に一人で決めちゃうけど、根底にあるのはいつまでも仲間と離れたくない気持ち。成長する喜びの一方で、いつか経験しなくちゃいけない別れの時をなるべく先延ばしにしたい。風間くんは小学校からお受験するから、しんちゃん達と別々になる予感がしっかりとあるんだろうな。たくさん勉強する大切さや、のちのちの為に今頑張る必要性が分かるからこそ、しんのすけ達にイライラしちゃう。気持ちはわかるぞ!

対してしんちゃんは、この先通う学校が違っても、それくらいで壊れる友情だと思ってないかもしれない。なんなら疎遠になることを全然想像してなさそう。幼さゆえってより、お互いへの信頼の高さが伺えて強い。

学校を舞台にしてるのに、正解を教えない。人それぞれのペースや考え方の違いを尊重しあって、自分なりの正答を模索する話でもある。「カンフーボーイズ」もそうだったけど、見終わってからの後味がちょっとビターで、考えさせられることが多い。


ゲスト声優の仲里依紗は、時かけといい細田作品の常連でもあるので全く違和感なし。ハキハキとした元気良いギャルキャラは、ご本人に寄せた当て書きかも。
今年の芸人枠はチョコプラの二人。声だけだとどっちが誰だか分からんもんだな。

今年もクレしんが無事見られたってだけで大満足。満☆

46本目
somaddesign

somaddesign