三樹夫

ハウス・オブ・グッチの三樹夫のネタバレレビュー・内容・結末

ハウス・オブ・グッチ(2021年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

グッチ一族のマウリツィオは運送会社の娘のパトリツィアとパーティーで接近、パパグッチからは財産目当てのどこの馬の骨かわからん奴との結婚は許さんと言われ、家を飛び出し結婚。結婚式にグッチ家は誰も参加しない冷遇っぷりをみせるが、孫ができたため態度は軟化。叔父グッチがパトリツィアを気に入ったこともあり、懐に入りこんだパトリツィアは、逐一占い師に相談という、これはヤバいことになる匂いプンプンの野望の階段の駆け上り方をしていく。
叔父グッチを刑務所にぶち込み権力を手中に収めるも、財務警察に自宅を踏み込まれ、マウリツィオは妻子を置いて一人足早にスイスへ逃走。女友達とできちゃって離婚を要求。パトリツィアからの留守電は聞くと3年寿命が縮む呪術みたいな恐怖の留守電だった。パトリツィアは殺し屋雇ってマウリツィオを暗殺。自宅へ凱旋し後妻を家から追い出してグッチ家の王となるかと思われたが、殺し屋雇ってマウリツィオを暗殺したことがバレ、懲役29年、グッチの経営からはグッチ一族が一人もいなくなるという、グッチ一族の崩壊をもって終わりの約2時間半の映画。

批評家筋からは役者の演技は最高、ストーリーはとっ散らかっていると評されてる本作だがそれも分かるところがあって、グッチ家の権力争いの話かと思えば、パトリツィアとマウリツィオの夫婦間の話になったり、夫婦間の話なのねと思っていたら、グッチ家の権力争いが挿入されたり、パトリツィアの野望の階段の話かと思えば、夫婦間の話をやっていたり、グッチ家の権力争いをバックグラウンドにパトリツィアとマウリツィオの夫婦間の話をやっているような変な映画。予告編を観ただけではグッチ家のドロドロの権力争いの話かと思うが、実際に観るとPTAの『ファントム・スレッド』を観てる時のような気持ちになった。

かなりパトリツィアに寄っていてというか感情移入しやすいようになっているというか、自分でデザインしたオリジナルバックを作らせたりとかいう(ちなみにバッグは売れなかった)、権力を手中に収めての女帝的な要素はカットし、金目当てでマウリツィオに近づいたのかただ単純に好きになったのかどちらともとれるようになっている。アダム・ドライバーは『最後の決闘裁判』に続きリドスコ先生作品でクズというかダメな人間を演じる。このマウリツィオっていうのはどうしようもない奴だよというのは、財務警察に踏み込まれた時に一人さっさとスイスに逃亡するシーンに表されている。
マウリツィオが暗殺されるに至るシーンが、ズボンのすそに輪っかみたいなの付けて自転車こぐという、権力争いが始まる前の恋愛パートの冒頭とわざわざ同じというので、リドスコ先生的には権力争いよりも夫婦間の話に注力してるように思える。権力争いを背景にした変な人とダメな人の夫婦間の話という、予告編と中身が違う変な映画。主要キャラの話すイタリア語訛りの英語も変さに拍車をかける。
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