回想シーンでご飯3杯いける

モーリタニアン 黒塗りの記録の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

3.4
9.11同時多発テロ以降のアメリカでは、テロ撲滅こそが最大の正義であり、中東系民族に対する偏見を助長するような実話映画も少なからず存在した。僕が実話映画をあまり観なくなったのもそれがきっかけだった。

しかし、2010年代辺りになって、そうした過剰な正義感も一段落し、逆にテロ実行犯や関係者に対する非人道的な拷問を題材にした「ザ・レポート」等、人権の側面を含めた多角的な視点を持つ映画が見受けられるようになったのは非常に良い事だと思う。中東民族への差別から平和が生まれるはずもない。

本作は、テロ実行犯を斡旋した容疑で拘束されたアフリカのモーリタニア人が、裁判を経ずに14年間も拘束された冤罪事件を基に映画化している。この不当な権力行使を暴く弁護士を演じるのはジュディ・フォスターだ。その役どころは「ザ・レポート」に於けるアダム・ドライバーに近い。

制作はイギリスのBBCで淡々とした語り口調。過激な映像表現よりも、副題になっている黒塗りの記録等、テロに対する戒めとして死刑囚を生み出すべく暗躍するアメリカ政府の恐ろしさを描き出す構成になっている。