双葉レイ

竜とそばかすの姫の双葉レイのネタバレレビュー・内容・結末

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

物語のメインであるベルと竜の関係性が上手く描けていないと感じます。なぜベルがあそこまでして竜を助ける流れになったのかが良くわかりません。
見ず知らずの子どもを救った自身の母親と重ねる描写はありました。ただ、恐らく鈴の母親にだって救った理由はある筈で(鈴という自分の子どもの可愛さを知っているからこそ他人の子どもを救った等)、本当に考えなしで他人の子どもを救ったとは思えません。
そういった理由と比較して現在の鈴(ベル)はどういう心境で竜を救うに至ったのかの描写がないと、物語として成立しないと感じます。
母親との和解(理解?)を描きたかったのであれば尚更そこはちゃんと描いて欲しかったです。

また最後の方の盛り上がり部分で『素顔を晒すことで信用を勝ち取る』という流れも疑問を感じます。
昨今のバーチャルの概念として、現実の身体性に依存せずに自分らしさが表現できる場になる可能性があるのではと度々議論されています。そういった中で『素顔を晒す』という明確に身体性に依存する要素をバーチャル空間に晒す、そしてそれによって相手からの信用を勝ち取るという流れにどうしても違和感を感じます。
『U』のアカウント作成時も自身の身体性を考慮してアバターが作られているのを見る限り、明確に現実と紐付いてる仕様になっていて、Facebook等でも二段階認証で携帯番号が求められたりするのでリアリティはある仕様だと思いつつ前時代的な設計だと感じます(作中で言われていた「Uであれば何度でもやり直せる」というのは嘘なんだよなあと)。

最後の家族問題についても、子ども一人で単身乗り込むという流れはあまりにもファンタジー過ぎます。
四国から東京という物理的な遠さを描く描写(深夜バスなど)があったりで妙なリアリティがあるのに、場所を特定する流れや実際に東京まで行った後の父親との対峙に関してはファンタジー過ぎて家族問題というテーマの重さと釣り合ってないと感じます。

その他、ジャスティンがなぜあんなに大きな権限を持っているのか(自警団なのに)やシノブくん・鈴の父親との関係、SNSの闇(本当と嘘の境界線)など、話の要素が多すぎて取っ散らかっている印象でした。
もう少し主人公二人の物語にフォーカスしても良かったのでは。
双葉レイ

双葉レイ