双葉レイ

アリスとテレスのまぼろし工場の双葉レイのネタバレレビュー・内容・結末

3.2

このレビューはネタバレを含みます

「アリス」と「テレス」は終始出てくることはなかった。
そうなるとこれは「アリストテレス」のことだとは思うけど、とはいえこんなミスリードを誘発させた意味は最後まで見てもわからなかった……といったように、この他にもツッコミどころは結構ある映画だった。
(原案の仮タイトルが「狼少女のアリスとテレス」だったらしいが……)

物語全体を俯瞰してみると、神隠しにあった女の子が不思議な世界に迷い込んでしまい、そこから現実に帰る話である。となると、本来の主人公はイツミということになるのかもしれない。
しかしイツミを主人公に据えるわけではなく、まぼろしの世界で生きるマサムネ(ムツミ)を主人公として描く、という構図は「本物」と「偽物」の対比なのかなと思った。
偽物の世界の住人であるマサムネは当然ながら偽物の存在であるが、本物と見分けがつかないような存在として描いている。つまり、本物と見分けがつかない偽物があった場合、それは本物と何が違うのか?みたいな話。それをメタ的な物語の構造としても表現しているのかなと。
そう考えると「偽物の物語」が一つのテーマなのかもしれない。冒頭の生姜焼きの件(生姜が入ってないじゃん云々)とも繋がったりと、その辺のテーマを匂わせるセリフが全体を通してあったように感じる。

とはいえ、そういったテーマの他にも思春期特有の歪んだ感情とか田舎特有の閉塞感であったりとか恋愛的(青春的?)ないざこざとか女性性の発露であったりとか、とにかく要素が多かった。
この辺は単純に映画として整理しきれていないと感じてしまうが、あまり深く考えずに映画(映像)として感覚的に受けとめるのが正解なのかもしれない。

実際のところ良い意味で引っ掛かりを感じる映画ではあった(上手く言語化できていないけれど)。あと、個人的に製鉄所まわりの設定は絵本的な世界観設定で結構好きではある。上田麗奈さんの演技も最高。
とはいえ、やはり要素が多すぎて混乱してしまい鑑賞中も頭をフル回転しながら見るのは体験としてやや疲れる。
見る側の負担が多い映画だと思う。
双葉レイ

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