もりゆうき

竜とそばかすの姫のもりゆうきのレビュー・感想・評価

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)
3.8
ただ見守るだけの愛はどれだけもどかしく、苦しいものだっただろうか。

世界観はさすが細田守だし、映像美も素晴らしく、音楽も素晴らしかった。
パワーアップしたサマーウォーズ感もある中で、大きく違う点として、作品中における愛の形が、1つではなかったということがあると思う。

すずやすずを取り巻く人々の多くがしていたのは、『相手のために積極的に何かをしてあげる』という、とても真っ直ぐな愛。
これはサマーウォーズでもみられたと思う。
だけれど、忍とお父さん、この二人の愛はとてももどかしく、苦しく、それでいてとても温かい愛であったと思う。

二人は、基本的にすずに何かをやらせようとはしない。その代わりに、
『何かあったの?』
『夕飯どうしようか?』
そんな言葉で、すずの意思を、行動を、ただ待っている。
どれだけ、助けてあげたいという衝動に耐えたことだろう。
十年近く彼らは、衝動に耐えながらずっと見守っていた。
もちろん、さりげなく、ずっと支えてもくれていたのだと思う。

すずを思うからこそ、口を出さない。手を出さない。
お父さんは、感謝もされてこなかっただろう。
でも、二人はすずを信じていた。
信じていたからずっと見守っていた。
彼らの十年を思うと、胸が苦しくなる。

こんな愛も与えられるような人間でありたいと、深く、思った。
もりゆうき

もりゆうき