あぶりかんぱち

竜とそばかすの姫のあぶりかんぱちのネタバレレビュー・内容・結末

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

細田守監督作品も次のステージに来たか…って感じの1本だった。監督の持ち味や強みを活かしつつ、世界を見据えた感のある作品だな、と感じた。

歌を軸に据えているだけあって、見せ方・聞かせ方のこだわりは強く感じられたし、歌で物語を補完する技なんかも細田監督ならこうやるんだ…!とワクワクしながら楽しめた。

その一方で、ネット世界の無責任な発言に傷つく人、匿名性を逆手に取った煽り、あっという間に消費される文化といった暗い部分もかなり直接的に描いていて、おお…と若干怯む部分も。さらに極め付けで顕在化するDV、毒親といった家庭環境の問題。「サマーウォーズ」の『田舎で優しい人の繋がりを感じたひととき』のような爽やかさはどこへやら…という感じ。

でも!
そんな中で逆に「これだけ広いネットの世界だからこそ誰かが君を見ている、助けてくれる」という救いを落としていってくれるのが細田監督。

深いところまで落としておいて、救済はとても小規模。でもそれが本人たちにとってどれだけ大きな行動だったか。<U>の世界ではあれだけの壮観を生み出したのに、現実で救える人など両手で抱えるほどしかいない、でもそれはネットの世界によって人々の想いが繋がったからこそ生まれた救済なのであって。

(細田監督に限らずだとは思いますが)細田監督は特に自身の境遇に合った作品を産み出す監督さんなので、今回は『親の手を離れて、ひとりで自分が正しいと思うことをやりなさい』というメッセージをこの作品に込めたんだろうと。作中の父親の立場が完全に細田さんだ!と感じたので。

対象年齢は明らかに上がっているな…と映画全体を見て感じたけど、画面の華やかさやワクワクする設定なんかは「面白いもの見た!」と思えるに充分すぎるほど。やはり夏は細田監督。そろそろ大人が主人公の話でも面白そう。
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