フィルム猫

竜とそばかすの姫のフィルム猫のレビュー・感想・評価

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)
2.0
結論から言うと、褒める部分が映像美と音楽しかない映画。

良い点は上述した通り、細田監督らしい鮮やかな色使いの世界観は見ていて綺麗だと思えるし、音楽もクオリティが高く好きな人にはハマるのだろうと感じた。

ここからは悪い点。
まず、世界観がほぼサマーウォーズと同じなのがありえない。普通監督が自分の作品を擦るか?サマーウォーズではインフラや経済のシステムから日常生活の細かな部分までオズに繋がっていることが劇中で説明されていたが、今作では根幹となるシステムの説明が大してなく規模のデカいSNSかなと思えば日常生活の細かな部分まで浸透している様子。世界観の説明が無いため、なぜ登場人物たちが異常なまでにUにこだわるのかがすっぽり抜け落ちている。

第二に、いくらなんでも登場人物たちに感情移入が出来なさすぎる。
主人公は、歌うことができないという自分の殻を破るために仮想現実のアスへと足を踏み入れた経緯を持ち、現実世界とのギャップが自身のコンプレックスでもある癖に、興味本位で平気で他のアカウントを身バレさせにいく。その方法も他者のプライベートを侵害し放題であまりにも理不尽。竜へとこだわる理由も意味不明だし、周りの登場人物たちも無責任だったり一方的だったりで見ていて終始不愉快。

第三に、演出に監督の負の感情が入りすぎている。
作品に監督の色が出るのは当然のことだが、本作では不愉快な要素にしかなっていない。急に始まるリアルタイムストラテジー風のクラスの会話とかSNSの罵詈雑言とか、監督の実体験を元にしているのかもしれないと感じるくらい前面に押し出されている上に演出がくどい。

脚本家がどれほど大切なのかを深く痛感させてくれる映画でした。
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