ShinMakita

U・ボート ディレクターズカットのShinMakitaのレビュー・感想・評価

3.1
1941年秋、ラ・ロシェル軍港。ドイツ軍はこの港から、多数の潜水艦<Uボート>を発進させた。大西洋の制海権を握るため、英国の輸送船を攻撃するのがその任務だった。しかし、ソナー探知などの対潜能力を向上させた英軍の前に、Uボート戦略は次第に劣勢に傾いていく。最終的に、出撃したUボート要員は4万人。うち3万人は還らぬ者となった・・・


明日出航を控えた<U96>の乗組員たちは、キャバレーで乱痴気騒ぎを繰り広げていた。実戦経験の少ない若い乗員たちを見るにつけ、不安をかき立てられて行く艦長。その傍らには、参謀役の機関長もいる。常に礼儀正しい熱心なナチス党員である副長も加わっていた。そんな彼らを観察するのは、報道要員としてU96に乗る事に決まったヴェルナー少尉だった。翌朝、総員50名弱の男たちを乗せ、U96が勇壮に出航していく。しかし大西洋の哨戒任務は退屈で、20日の間、敵と遭遇することはなかった。臭く息苦しい艦内で発狂寸前となるヴェルナー。だが事態は唐突に変化する。仲間のUボートから無電が入り、敵輸送船団を一緒に迎撃することになったのだ。直ちに合流ポイントに向かうU96。しかし到着してみると、すでに仲間の姿はなく、英軍駆逐艦が待ち構えていた。その追跡を逃れながら、爆雷攻撃にじっと耐えるU96。駆逐艦との静かな心理戦の末、何とか危険水域を脱出するのだった。その直後、U96は巨大な輸送船団と遭遇する。護衛艦の姿も無く、まさに格好の標的だ。U96は4発の魚雷を発射して潜行、2隻命中を音探で確認した。しかしそこに、2隻の敵駆逐艦が出現。袋のネズミとなったU96は爆雷攻撃を避けるため深度を下げて行く。200、210、220メートル・・・可能深度より潜ったことで、水圧に堪えきれず外れたボルトが飛びはねる艦内。だが艦長の勇断が功を奏し、敵の追跡を撒くことに成功した。浮上してみると、魚雷をぶち込んだタンカーが炎上している。艦長は魚雷をさらにぶち込んでトドメを指すが、双眼鏡でよく見ると、炎の中で多数のタンカー乗員たちがもがき苦しむ姿が映し出された。自分たちを追っていた駆逐艦は、タンカーの人命救助を後回しにしていたのだ。やるせない思いを抱きながら、U96の乗員たちは再び潜行するのだった。

戦闘を経験し、疲弊したU96。誰もがロシェル軍港への帰還を望んだが、本部から非情な命令無電が入ってきた。まっすぐ軍港に戻るのではなく、ジブラルタル海峡を抜けて進め、というのだ。英軍のドッグが存在し、敵艦が多数控える中を突破するというのは自殺同然だ・・・




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ドイツの監督、ヴォルフガング・ペーターゼンの名を世界に知らしめた傑作『U・ボート』。TVミニシリーズを編集した作品ですが、それを数年後にディレクターズカットしたBDを購入。画も音も、古さを感じさせない迫力でした。あまりにも哀しい結末は、何度観ても後味悪く心に残りますね。登場キャラたちも魅力的で、特に機関長のキャラが最高。神経質でか細い感じのオトコなのに、艦長の傍を離れない侠気の持ち主。声は、「太陽にほえろ」の予告ナレーションでおなじみ小林恭治。渋かったですね。

潜水艦モノの良さがたっぷり詰まったマスターピースとして、一度は観ておくべき作品です。駆逐艦との心理戦、魚雷発射のカタルシス、ドラマチックな密室群像劇・・・その全てが3時間以上の長さのなかに詰まっていますよ。
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