ほのか

アウシュヴィッツ・レポートのほのかのレビュー・感想・評価

3.9
煙と灰に。








生き抜くため、というよりかはこの地獄を終わらせるために。各々が自身を捨てる覚悟を決めて繋ぐ。リスクは大きい。確証はない。それでもなんとか繋いで繋いで、たくさんの人の絶望と想いと屍を乗り越えて、届けられた真実と救われた命は今もこうして繋がるべくして繋がってる。


なんどホロコーストが描かれる作品を観てもずっとずっと苦しい。手を替え品を替えさまざまな角度から描かれるかの場所をこれまでもこれから何度だって繰り返し繰り返し自分にすり込むように観続ける、けど、その度に、現実であることを知っているのに、悪夢のようだと思うだろう。悪い夢であったらどれほどよかったか。
まるで人としては存在してないように扱うのに、刃向かえばしつこくしつこく個人に執着してくる。大袈裟なほどに大声で脅したり、お前をみてるぞと個人を精神的に追い詰めたり、こんな目に遭うんだぞと見せしめに殺したり、そこまでのことをしてひとびとを支配した先にいったい何があるんやろうね。彼らは彼らが許さないひとたちを排除した先に一体何を見てたんやろうね。


後半、信じられるかどうかの判断をし続ける/され続けるのもまた辛かった……。一瞬たりとも安心できない。進むか死ぬかみたいな道中、信じられなのについていくしか選択肢がないのがめちゃくちゃ怖くて、そんななかまっすぐ歩け!痛みに慣れろ!って叱られるのに安心してしまって、感覚が狂ってしまってるなぁって思った。
ウォレンが2人の話を信じたくなかったのも、もどかしいけれど、非難はできんなあ。情報は操作されてる、そのことを知らなかった。真実だと思ってたものが崩れ去っていくの、そんなん信じたくないやろ誰だって。物的証拠がないなかで目の前のぼろぼろで必死な二人の若者の信じられない証言を信じるのはとても勇気がいることだっただろうな…。




観てる間、私は今自分をどこにおいてるのかって、都度確認しながら観てたんやけど、どうやってもスクリーンのこっち側でしかなくて、それは怖かったからで、そこに居たくなかったからで、向こう側にいないことに安心したかったら。過度に脅かしたり、変に演出がかった映画ではなかったから、その分冷静に観られたのもある。
言葉での説明が少なく、知識が少ない私は察するしかない場面も多々あったけど、それでも飽きないのもまた演出の妙。光、影、色、カメラワーク。逃げてる場面までは手持ちカメラやったんかな?手ブレがまた不安感を煽る。あんなに長い時間画面が90度傾くの初めてやったかも。今までこんなに画面を広く感じたことないなって思った。んで、また揺れる揺れる。視点を定めないから、画面酔いしそうやった、けどそれもまた狙い通りしてやられてただけなん、すごいわ。

テンポ!っていうのが急げって意味なん初めて知りました。急げ!を楽曲が演奏される速さを意味する音楽用語で使うのドイツ語っぽ〜いっていうあほみたいな感想。