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アフリカン・カンフー・ナチスのambiorixのレビュー・感想・評価

2.8
最近なぜかアフリカの映画を観る機会に立て続けに恵まれ、ウガンダ、エチオピア、ケニアと渡り歩いてきたけど、設定のぶっ飛び度合いで言ったらガーナ(・ドイツ・日本)製作のこれが頭ふたつみっつ突出してる。
死んだはずのヒトラーと東條英機(とゲーリング)がガーナに落ち延びてガーナアーリア人なる種族を名乗り、現地の人間を洗脳しながら新ドイツ国および新大日本帝国の建国をもくろむ、というアホみたいなツカミからしてもう最高。東條はともかく、ヒトラーはそもそも似せる気すらないし、ゲーリングにいたってはなんと黒人だ。ちなみにムッソリーニがいないのは、イタリアに共作を断られたから…ではなく、イタリアがポンコツだかららしい(笑)
ただ、盛り上がり的には冒頭のくだりがピークで、ぶっちゃけ出オチの感は否めないかなあ。話のメインはあくまでも、恋人をヒトラーに寝取られ師匠を殺され自身も指を切られてしまったガーナ人青年アデーの復讐譚なので、例の三バカはすぐさま背景に退いてしまう。とりわけ主人公がカンフーの修行にいそしむさまを延々拝まされる中盤なんかはかなり退屈だし、その印象はアデーと枢軸サイドがぶつかるクライマックスの大会の場面になっても変わらなかった。そうしないと尺がもたないから、っていう事情は重々わかるんだけど、参加者全員の拳闘を見せる必要はなかったのと違うか。芸のないカメラ構図やスローモー演出、劇伴の使い方(とくにヒトラーの処刑用BGMはしつこくて嫌い)が何度も何度も反復されるので、結果的に作りの安っぽさが悪目立ちしてしまうデメリットしかなかったと思う。チープすぎて逆に面白い、みたいな効果も特に感じなかった。「あれっ?カンフー映画じゃなかったの?」と言いたくなるほどナンセンスきわまりないラストバトルも笑いや爽快感よりむしろ不快感の方が勝ってしまった。コラテラルダメージ出し過ぎじゃない?もちろん個人差はあるだろうけど、全編を通して不謹慎描写と滑稽描写の食い合わせが悪かったように思う。
あと目につくところでいえば、関西弁の字幕も人を選ぶよね。あれがたとえば、普段は標準語で喋ってる中にポロッと入れてくるとかならまだ笑えるかもしれないけど、のべつにあの調子だと単なるノイズにしかならないっていうか、マジで誰が考えたんだろう?この部分だけで0.5点は下げました。
ガーナの映画に「天皇陛下ばんざーい!」なんてなワードが出てくることはおそらく未来永劫ないと思うので、そういうフェチの人にはおすすめ。
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