史上最強のOLとは。
今回駄文です。
バカリズム脚本だったんですね。知らなかった。ヤンキー×OLというまさかの掛け算。「派閥争い」というキーワードを拳で争うという文字通りの受け取り方をした結果、クローズよろしくなバイオレンスコメディに昇華しています。
ありふれた商社三富士商事に勤める直子はどこにでもいる普通のOL。彼女が勤める会社ではOL同士の派閥争いが激化しており、まるでヤンキーマンガのような群雄割拠。殺伐とした環境であった。
そんなある日、中途採用で入社した蘭があっという間に三富士のOL達を次々と倒しトップに立つ。正義感が強く弱い者の味方である蘭は周囲に認められる存在になっていた。
また、盗撮から直子を守ったことをきっかけに蘭と直子は正反対な生き方をしながらも親友となる。
OLらしい日々を過ごしながらも他社のOLからも目をつけられた蘭は喧嘩が絶えない日々。そんな蘭を直子は見守りつつも「自分には関係ない話」として違う世界の話だと思っていた。
しかし、名前が広まり過ぎたのか、ある一部上場企業のトムソンのOL達に直子が拉致されてしまう。
救出のため一人で乗り込む蘭だが、あと一歩のところで倒されてしまう蘭。絶対絶命の状況の中、それまでごく普通のOLを装っていた直子が本性を現す。
そして、「史上最強のOL」を決める戦いが幕を開ける。
アイディアのピースさえハマれば、あとはとっても丁寧なフォーマットができているのがヤンキーマンガ。シナリオ考えるの楽しかっただろうなあ。本作ヤンキーマンガが好きな人にはニヤニヤしてしまう所謂「ヤンキーマンガあるある」が目白押しです。
そう、ヤンキーマンガはある程度フォーマットができていて、その中でキャラクターの魅力やセリフ、立ち回りのかっこよさで差別化しているのが特徴。
大体が【派閥争いをしている学校(組織)に超強い転校生(新入生)が現れる】→【学校の番長格(あるいは幹部くらいのやつ)を倒す】→【そのバックが出てくるも倒す】→【他所に名前がしれ渡り色んな奴から目をつけられる】→【全部倒す】→【天下取る】みたいな流れ。ほぼこれ。
嘘だと思うなら調べて欲しいです。クローズとか、ナンバMG5とか、東京卍リベンジャーズとか、今日から俺はとか、ろくでなしBLUESとか、私読んだの大体こんな感じでしたよ。クローズに至っては続編のワーストでも同じことしてましたからね。
このフォーマットにちょっとしたアイディアをミックスすることでオリジナリティを出すパターンもあるわけです。タイムリープするとか、不良であることを隠したくて二重生活するとか。
で、本作はOLにこのフォーマットをはめてるわけですが、見事にマッチしてましたね。方向性は一緒だから自然(?)なストーリー。ただこれ、バカリズムっぽい皮肉が隠れてる気が。
というのも、私もヤンキーマンガ好きで色々読んできたんですけど、読み終わるといつも思うんですよ。「この不良達はなんのために喧嘩ばっかしてるんだ?」って。
例えば、ツレがやられて仕返し~とかはまあなんとなくわかるんです。友達が傷つけられて黙ってられないなんて、素敵じゃないですか。
でも、チームとか組織とかでかくするために他所に喧嘩売るって何?舐められないようにシメるとか。でかくしてなんかいいことあるんですかね。営利目的なんかな?利益が出るとか?
こういう生産性の無いこと一生懸命やる感じが「青春」っぽいし、なんかアツくなれるのかもしれません。もう部活ですよね。顧問をつけず、大人に頼らず他校と試合を組んだり。下手な部活よりよっぽどちゃんとやってる。
ただ、一歩引いた所から覗くと、逆にギャグっぽく映ってしまうものなのかもしれません。
でまあ、派閥争いって、自分たちの居心地とか、面子の話じゃないですか。「我関せず」貫けばいくらでもやり過ごせるし、多少は影響あるだろうけど、それでも会社にきっちり貢献した方が自分の派閥でかくするよりよっぽど出世に近づく。
こういう一見無駄っぽいことでも、エネルギーを一生懸命使ったり筋の通った美学があったりする。この辺の似通った部分をシナリオに落としこむことで笑いをとるという、インテリジェンス溢れる表現嫌いじゃないです。
ていうか「架空OL」日記の精神的続編な気がする。真紀ちゃんが目指してた「史上最強のOL」というワード、まさかの本作で回収してましたね。なぜバカリズムはOLの内面に明るいんだ(笑)
個人的にはキャストが結構いい仕事してたと思います。エンケンさんの奇妙な役が話題になりがちですが、私はトムソン3強のキャスティングが好き。邦画、邦ドラマにおいて不可欠な名バイプレーヤー3人をクソみたいな役で無駄遣い。良かったです。
しかし、これだけ色々言っといてあれですが、正直そんな面白くなかったです。まず既存フォーマットがあるタイプのストーリーなので目新しさがありません。後半ベスト·キッド的展開に持ち込みますが、これも少年マンガあるあるなので折り込み済み。
結局出オチなんですよね。OLが喧嘩するって変わった設定を咀嚼したらあとはどっかで観たことある話。まあそれすらもネタにしてるので狙い通りではあるのでしょうが、それで作品が面白かったという感想には繋がらないかな。
あと、アクションがショボい。そこが売りじゃないとわかっているが、もうちょいなんとかならんかったのでしょうか。全然強そうに見えない(笑)
でも映画のオチのあの上映時間全部放り投げる感じは好きでした。そりゃ完敗だわ。
というわけで、なんかしながら観るくらいでもいいと思いました。でも観て損する映画ってわけでもなくて、これくらいの距離感、温度感の邦画ってやっぱ大事だなって再確認。
あとヤンキーマンガって面白いですよね。オススメあったら教えて欲しいです。
2024年 136本目