要

戦場のメリークリスマス 4K 修復版の要のレビュー・感想・評価

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第二次世界大戦中、日本占領下のジャワ島。俘虜収容所を舞台に、戦争と当時の規律・価値観に翻弄される日本兵たちの葛藤、そして敵国捕虜との人間愛を描く。戦闘シーンがないことに加え、出演者全て男性という異色の戦争映画。

原作は英国人の著者が実際にジャワで捕虜となった経験が元になっているため、日本兵の捕虜への待遇や悪行が包み隠さず描かれるのでちょっと苦しい。かつて我々(の祖先、共同体)が正しいと信じて疑わなかったもの…武士道、ハラキリ、根性論。欧米諸国への劣等感などを、客観的に見ることができる。

戦闘シーンがないのに、戦争ってほんとになんなの…無理…と思った。正しい人など一人もいない、日本人の個々を恨みたくないとはロレンスのセリフだが、日本兵を憎まず戦争を憎むみたいなスタンスが一貫していて胸がいっぱいになる。

若かりし日のビートたけしの存在感!
横暴な日本兵・原をセオリー通り見事に演じたかと思えば、それアドリブ?ってくらい共演者の自然な笑顔を引き出したりしていて。ボウイさえ食っていて、この人本当にすごい人だったんだな〜って初めて思った。
ボウイのカリスマ性や坂本龍一の音楽で支えられているような部分もあって一見危ういが、奇跡的なバランスで成り立っている感じがした。ロレンスの日本語の下手さとか、辿々しさが逆に緊張感を保ってるみたいな。

ヨノイとセリアズ、時代が違えば…と思わずにいられないが、あの特異な状況でなければ惹かれ合うこともなかったのかもしれない。

セリアズは弟に対する罪の意識から、その身を投げ出すような生き方を選んできた人間。有名なキスシーンは敵味方を超えた友愛の印とも、個人的な愛情表現とも取れるが、あの瞬間に身を呈することが彼の魂にとって重要だったようだ。
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